第153話 ゲイリーからの情報
この日、俺は王都でゲイリーと待ち合わせた。
「珍しいじゃねぇか。おまえからメシに誘うなんて」
「まあな。……それで大体察しているとは思うが――」
「ウェズリーの件だな?」
さすがはゲイリーだ。
察しがよくて助かる。
「実は騎士団内でも結構話題になっているんだよ。何せ相手は魔法兵団を支えてきた大物一族のご令嬢……それが結婚を渋るとなったらよろしくない噂も出てくるってもんだ」
「よろしくない噂? ――ぜひ聞きたいな」
「…………」
「? どうした?」
話の途中でゲイリーはボーッとこちらを見つめてきた。
「いや何、おまえがそういうゴシップ系の話に関心を示すとはな」
「普段なら聞き流すところだが、アボット地方の未来にかかわる大事な内容かもしれないからな。今は何でもいいからとにかく情報が欲しいんだ」
「よほど気に入っているみたいだな、あそこが」
ゲイリーの言うあそこというのはアボット地方のことだろう。
……俺自身、驚いている。
あそこへ左遷させられた当初は一刻も早く王都勤務へ復帰するぞと躍起になっていたというのに、今ではあの地を守ろうと奔走していた。
あそこに――アボット地方に人生の価値観をガラッと変えられたな。
「いいところだよ、あそこは。人も含めてな」
「同感だ。それで肝心の情報なんだが……どうもウェズリーの実家がキナ臭ぇ」
「っ! ジェンキンス家か……」
リリアンさんの方から結婚の話を切り出したが、ここへ来てその本人が渋りだしている。このちぐはぐさの背景にはやはりジェンキンス家が大きく関与しているようだ。
「考えられるのは平民からの成り上がり、か」
「まあ、グラバーソン家と親族関係になれば自ずと公爵家であるマクリード家とも距離が縮まる。しかし、それでは成り上がりと言えないんじゃないか?」
「今回の結婚はあくまでもステップアップの一環に過ぎない――としたらどうだろうか」
「っ! なるほど……何らかの理由で相手側の魂胆に気づいたリリアンさんはそれで結婚を渋りだしたのか。破棄となったらグラバーソン家もタダでは済まないからな」
「そうなってくると、先日のローウェル・グラバーソンの件も、何かしらの形でつながっていそうだな」
徐々に見えてきた今回の事件の真相。
こうなったら……直接ウェズリーに接触を試みてみるか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます