第152話 村の子どもたち
ジェンキンス家の調査に乗り出すため、俺は彼をよく知るゲイリーに話を聞くことにした。
この日もまた駐在所をあけることになってしまうのは忍びないが……ここにはエリナの他に番犬のリンデルや湖に住む老竜アスレティカもいる。
安全面に関しては心配しなくても大丈夫だろうと思う。
……俺の存在意義が危ぶまれるな。
朝霧が立ち込める中、愛馬レオンを厩舎から出した時、駐在所をガナン村長が訪ねてきた。
「朝早くから精が出ますな、ジャスティン殿」
「ガナン村長? どうかされましたか?」
「いつもの農作業に区切りがついたんで、お礼をしに」
「お礼?」
何かやったかなと考えていたら、ガナン村長は一枚の紙を広げてみせる。
そこには捕まったローウェル・グラバーソンに関する記事が。
「これによれば、ローウェル・グラバーソンがゴーテル魔鉱山を自らの支配下に置くため、禁じられた魔法を使用して実の兄である当主を陥れようとしていたとあります」
「そこまで報じられているのですね……」
グラバーソン家にとっては大きなイメージダウンになるだろうな。
それに……アミーラもショックを受けていた。
親族が実の父親を破滅させようとしていたのだから当然だ。
あと、こういうのは尾ひれがついて余計な憶測を生む。
アミーラはそれを恐れているようだった。
いつも一緒に遊んでいるパーカーたちからの視線が変わってしまうのが怖かったのだ。
俺もそれを心配していた――が、噂をすればなんとやら。そのパーカーを含む村の子どもたちが駐在所へとやってきたのだ。
「ジャスティン師匠……アミーラはいますか?」
「あ、ああ」
代表してパーカーがそう尋ねてくる。
すぐにアミーラを呼びに行こうとしたが、振り返るとすでに彼女は駐在所から出てきてこちらへと近づいてきていた。
そこへ駆け寄る子どもたち。
これから何が始まるのか、ガナン村長と一緒に固唾をのんで見守っていると――
「アミーラ……俺たちはいつでも君の味方だ」
「何かあったらすぐに私たちに言ってね」
「必ず力になるぞ!」
「み、みんな……」
村の子どもたちはアミーラを激励に来ていたのだ。
パーカーたちの温かい言葉を耳にしたアミーラは感極まって泣き出してしまう。
「いい子たちですね」
「村の宝だよ」
確かにガナン村長の言う通りだ。
魔鉱山の件はカタがついたけど……まだリリアンさんの件が残っている。
すべてを解決し、アミーラがまた笑顔で生活できるよう気合を入れていかなくちゃな。
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