第147話 元凶

 強硬策に打って出ようとするダーレン様を必死に止めようとするアリッサ様。

 おふたりの背後へと回り込むと、タイミングを見計らって聖剣を抜く。


 すると――


「むぐっ!?」

「ダ、ダーレンさん!?」

「兄上!?」


 突然膝から崩れ落ちたダーレンさんを心配して駆け寄るアリッサ様とローウェル殿。

 しばらくしてゆっくりと立ち上がったが、ひどい頭痛がするらしくコメカミのあたりを手で押さえながら状況確認を行った。


「ア、アリッサ様……?」 

「どうしたんですか、ダーレンさん」

「いえ、なんだか突然眩暈が……それよりここは……」

「マクリード家のお屋敷ですわ」

「お屋敷? なぜ私はお屋敷に……」

「えっ? 覚えていらっしゃらないのですか?」


 混乱状態に陥ったダーレン様とアリッサ様。

 その後ろではローウェル殿が「ヤバい」と顔を青くしている。


 やがてこっそりその場から離れようとするが――そうはいかないよなぁ。


「どちらへ行かれるおつもりですかな、ローウェル殿」

「っ!? じゃ、邪魔だ! どけ! これから大切な用事があるんだ!」


 怒鳴りつけた後、俺を押しのけて床へと視線を落とすローウェル殿。

 ……露骨というか、実に分かりやすい人だ。


「お探しの品はこちらですかな?」

「何? ――き、貴様! なぜそれを!」


 俺が手にしていたのはダーレン様が身につけていたペンダントだった。それを見た途端、ローウェル殿の表情が一変。態度も慌ただしいものへと変わっていった。


 本当に分かりやすい人だことで。


「先ほどから妙な魔力を放っておりましたので、もしかしたらダーレン様のおかしな発言の元凶になっているのではないかと思い、失礼を承知の上で斬りとっておきました」

「き、斬っただと? 嘘を言え! そのような素振りはなかったぞ!」

「これでも聖騎士の端くれ。早斬りは得意でしてね」

「せ、聖騎士だと!?」


 やはり俺が聖騎士だという情報は持っていなかったか。

 いつぞやの悪徳商会のごとく、ただの田舎騎士程度の認識しかなかったようだ。


「ダーレン様の様子を見ていると、やはりこのペンダントが原因のようですな。早速こいつを魔法兵団へ提出し、入手経路も確認しなければ」

「っ! ま、待て! それは俺が――」

「ローウェル」


 ペンダントを奪おうとして手を伸ばした直後、背後から名前を呼ばれて全身が強張るローウェル殿。


 振り返ると、そこには腕を組んで怒りに満ちた表情を浮かべるダーレン様の姿があった。

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