第146話 急転直下

 アミーラやリリアンさんの父親であり、グラバーソン家の現当主であるダーレン様がやってきたのだが……なんと弟で俺がマクリード家を訪れた目的の人物でもあるローウェン殿も一緒だという。


 俺とアリッサ様は慌てて部屋の外へ出ると、そこには談笑しながら歩くふたりの紳士が。


「ダーレンさん……」

「おぉ、これはどうもアリッサ様」


 人の良い笑顔で近づいてくるダーレン様。


 ……なんだ?


 すれ違った瞬間、何か妙な気配を感じた。

 この感覚は前にもどこかで――考えごとをしていると、その間に今度はローウェン殿が会話に入ってきた。


「今日はお嬢様に素晴らしい報告をお持ちしたのです」

「素晴らしい報告……?」


 わずかだが、アリッサ様の声色が変化した。

 どう考えてもそれは俺たちにとって「素晴らしい」とは言い難いものだろうな。


「なんでしょうか?」

「実は以前から話し合いが続いていたゴーテル魔鉱山についてなのですが……ダーレン兄さんも我がグラバーソン家が管理すべきだとようやく理解してくれました」

「なっ!?」


 おいおいおい。

 どういうことだ?

 ダーレン様は反対派じゃなかったのか?


「ど、どういうことですか、ダーレンさん」

「お嬢様……ゴーテル魔鉱山に眠っている魔鉱石の量は計り知れません。これは一大産業に成長します」

「……何がおっしゃりたいのですか?」

「正直、辺境領地を治めるトライオン家では手に余るかと」

「本気ですの? そんな話をお父様が許すはずがありませんわ」

「ですので、今日はドノルド様にその件をご報告しようと」


 まずいな。

 話がどんどん先へ進もうとしている。

 アリッサ様もなんとか食い止めようと必死になるが、止まりそうにないぞ。


 こうなったら体を張ってでも止めてやると前に出た――その時、再びさっき感じた妙な気配が。


 ダーレン様に近づいたことでそれが強まったな。

 もしかして――


「っ!」


 俺が目をつけたのはダーレン様の首にあるペンダント。

 そこにはめ込まれた紫色の宝石が怪しく輝いている。


 確か、前に魔法兵団の仲間から聞いたことがあった。

 たぶん、あれにはそれが仕込まれているはず。


 ……なるほど。

 すべて読めたぞ。


 少しダーレン様から距離を取ると、俺は聖剣へと手をかけた。

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