第145話 狙いは何?
俺の問いかけに対し、重くなっていたアリッサ様の口がゆっくりと開く。
「これは憶測の域を出ませんが……恐らく、他国へ横流しするつもりではないかと」
「えっ!?」
またとんでもないことを言いだしたな。
……けど、正直俺もそれを疑っていた。
でなければそこまで強くこだわる理由が見つからない。
ただ、それで疑問が丸く収まるというわけじゃなかった。裕福なはずのグラバーソン家にいながらどうしてそこまで金に執着するのか。
あながち、シュナイダーの言っていた話は本当なのかもしれないな。
「アリッサ様……実はこちらも独自のルートである情報を手に入れております」
「まあ、そうなんですの」
「はい。なんでも、ローウェル殿はグラバーソン家当主の座を狙っていると」
「っ!」
一瞬にしてアリッサ様の表情が強張る。
恐らく、思い当たる節があるのだろう。
「その情報の信憑性はどれほどですの?」
「提供者自身も別の人物からの又聞きでしたのでなんとも……しかし、仮にローウェル殿が他国への横流しを前提で魔鉱山の採掘権利を独占しようとしているなら、そこで得た力をもとにグラバーソン家――いや、もしかしたらこの国自体の支配にまで手が及ぶかもしれません」
「……荒唐無稽で飛躍させすぎと一蹴できないのが本当に怖いですわ」
今度は苦笑いを浮かべるアリッサ様。
確かに鼻で笑われてもおかしくはないのだが、何度かローウェル殿と顔を合わせているアリッサ様からするとシャレになっていないと捉えられたようだ。
「今の話はダーレン様にもお伝えしますわ」
「ぜひ。それと――」
「お嬢様!」
会話の途中であったが、ひとりのメイドが突然部屋へと入ってきた。
「ノックもせずになんですの?」
「も、申し訳ありません……ですが、ダーレン様がおこしになって」
「ダーレン様が?」
このタイミングでグラバーソン家の当主が来訪。
できすだなと思った矢先、メイドからさらなる追加情報がもたらされる。
「そ、それが……ローウェル様もご一緒のようで……」
「「っ!?」」
これには俺もアリッサ様も驚いた。
ローウェル殿と一緒にダーレン様が?
一体何のつもりだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます