第144話 不穏な空気
アリッサ様は自分の知るマクリード家とグラバーソン家の内情について俺にすべてを打ち明けてくれた。
どうもここ数日の両家の動きについては彼女も思うところがあったらしい。
それはどちらかというと父親よりもグラバーソン家へと向けられていた。
「単刀直入に申しますと、ローウェルさんはゴーテル魔鉱山に眠る魔鉱石をすべてグラバーソン家で管理すべきだと主張しています」
「……やはり彼が事の発端だったのですね」
予想的中というわけか。
ただ、そんな強引な主張がすんなり通るはずもなく、マクリード家当主であるドノルド様は突っぱねているらしい。
「当然ながらお父様は彼の意見に耳を傾けてはおりません」
それを聞けてひと安心だ。
これでドノルド様まで乗り気だったならほぼ確実に奪われるだろうし。
まあ、舞踏会で話をした時は思慮深い人だって印象があったし、他の領地にちょっかいを出すようなことはないだろうとは思っていたけど。
「そもそもあそこを治めているのはトライオン家なのですから、それをマクリード家が掠め取るようなマネなどできませんし、何よりお父様は謙虚で誠実で優しくて素敵な殿方であるドイルさんを大変気に入っています」
……ちょっとアリッサ様の主観が入っているような?
ただ、全部真実なのでスルーしておこう。
とにかくドノルド様が否定的であるという事実には安堵した。
――だが、どうもそれで終わりって話じゃないみたいだな。
「以前、この屋敷でグラバーソン家の当主であるダーレン様を交えた話し合いが行われましたが、ローウェル様はまったく折れなかったそうです」
「素朴な疑問なのですが……なぜローウェル殿はそこまで魔鉱山に執着するのでしょうか。採掘される魔鉱石を売買して利益をあげるというのが真っ先に思い浮かびますが、グラバーソン家は経済的に逼迫した状況でないと見受けられます」
ここも気になるところではあった。
トライオン家に私怨があるとも思えないし。
この話題を提示すると、途端にアリッサ様の表情が曇った。
どうやらここが今回の案件の肝と見て間違いないようだ。
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