第143話 アリッサの成長
通されたのは応接室。
本来は当主であるドノルド様が会談などで使う部屋だが、今回は特別に使用許可が下りたらしい。
……というか、俺が来ることを先読みしていたのか?
「そろそろいらっしゃる頃合いかと思いましたので」
「えっ?」
「ふふっ、さっきからこちらの準備の良さに驚いているような顔つきをしていますよ?」
「も、申し訳ございません」
「謝る必要はありませんわ。さあ、おかけになって」
なんというか……改めて公爵家のご令嬢なのだなと認識させられた。
舞踏会の際やトライオン家に顔を出していた時は年相応にいろいろと悩み多き女の子って印象だったが、今はどこかしたたかさを感じる。
成長――と言っていいのかな?
まあ、父親であるドノルド様としては喜ばしいのだろうが、密かに思いを寄せている(っぽい)ドイル様は気をつけた方がいいかもしれない。
もちろん、悪い意味ではないのだが。
「あなたなら、そう遠くないうちにローウェルさんに行きつくのではないかと予感しておりましたわ」
「そ、それはどういう……」
「あの方、最近になってどうも怪しい動きが目立っていて……それにはリリアンさんも関与しているようなんです」
「リリアンさんが?」
アミーラの姉であり、騎士団のウェズリーと近々結婚することになっているリリアンさん。
ローウェル・グラバーソンとは叔父と姪って関係になるが……そこが今回の件でつながっているというのか?
「……アリッサ様、あなたの把握している情報を教えていただけませんか?」
「喜んで――と、言いたいところではあるのですが、本件はマクリード家にとっても非常にデリケートな話になります」
「そうですよね……」
「ですので、情報管理はいつも以上に徹底してくださいね」
「承知しております。――えっ?」
「えっ?」
思わず声が重なってしまった。
「お、教えていただけるのですか?」
「断ったつもりはありませんわ」
「それは――確かに」
彼女の言葉を思い出してみると、明確に拒絶の言葉は出ていない。
むしろ情報管理を徹底し、外部へ漏らさないようにすれば教えるという破格の条件を提示している。
「こちらから頼んでおいてこう言うのもなんですか……大丈夫ですか?」
「わたくしは――いえ、マクリード家は聖騎士ジャスティン・フォイルを全面的に信頼しておりますのでまったく問題ありませんわ」
そ、それはそれでプレッシャーを感じるな。
こちらの緊張をよそに、アリッサ様はさらに続けた。
「お父様としてもきっとそれを望まれますわ」
「ドノルド様が?」
つまり……マクリード家としても何か思うところがあるってわけか。
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