第142話 マクリード家、再び

 あのパーティー以来となるマクリード家の屋敷。


 アミーラ曰く、ここに渦中の人物であるローウェン・グラバーソンがいるらしい。

 彼の話が発端となり、グラバーソン家はゴーテル魔鉱山をトライオン家が管理することに不満を抱いているという。


 真相を確かめるべく早速面会を希望したのだが……ここで予想外の事態が。


「えっ? 面会できない?」

「申し訳ありません。お引き取りください」


 屋敷の門番から返ってきたのはまさかの「NO」だった。


「なぜだ? なぜ会えないんだ?」

「ご本人から『誰とも会いたくないから面会の要望はすべて断ってくれ』と仰せつかっております」

「そんなバカな……」


 こいつはいよいよキナ臭くなってきた。

 そこまで拒絶するのには必ず何か理由があるはずだ。


 できれば本人に追及をしたいところだが、ここで俺が強引な手に打って出るのは危険だろうな。もしかしたら、せっかくうまくいきかけていたマクリード家との関係に亀裂が入る可能性もある。


 強行突破は難しいが、だからといってむざむざ手ぶらで帰るというのも……どうしたものもかと悩んでいたら、庭の方からひとりの少女がやってきた。


「あら? ジャスティンさん?」

「ア、アリッサ様!」


 やってきたのはマクリード家の御令嬢で俺とも面識のあるアリッサ様だった。


「どうかされたのですか?」

「ちょっと会いたい人がいまして」

「そうでしたの。なら、どうぞお屋敷の方へ」

「ア、アリッサお嬢様!?」


 慌てて兵士が俺と彼女の間に割って入る。


「この騎士が会おうとしているローウェル様は誰とも会いたくないと」

「別にローウェルさんに会わせようというわけではありませんわ。実は先日、とてもいい茶葉をいただいたので、ドイルさんのお口に合うかどうかチェックしていただきたいと思っていましたの」


 そこでアリッサ様は門番たちに気づかれないよう俺に目配せをする。

 すぐさまピンときた俺は話を合わせることに。


「私でよければ喜んで」

「まあ嬉しい。感謝しますわ。ささ、どうぞ」

「お、お嬢様――」

「あら……わたくしの客人に何か?」


 表情は笑顔のままだが……明らかに目の奥が笑っていない。


 これが公爵家令嬢の凄みなのか。

 思わず門番が後ずさりをしてしまうくらいの迫力だ。


「では、改めましてどうぞ我が家へ」

「あ、ありがとうございます」

 

 俺も顔を引きつらせつつ、彼女のあとを追ってマクリード家の屋敷へと入っていった。

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