第134話 複雑化する問題

 アミーラが目撃したという謎の商人。

 恐らくそいつが今回の件について一枚噛んでいると見て間違いなさそうだな。


 リリアンさんとウェズリーの結婚式までもう時間がない。

 

 それまでになんとか問題解決しておかないとな。


 情報を得た翌日。

 俺はドイル様のもとへと向かい、新たに発覚した情報について報告する。

 ちなみにこの日、アリッサ様は不在だった。


「商人か……君の言うように、タイミング的にも気がかりだね」

「実際に何を企てているのか、詳細についてはなんとも言えません」

「かといって、さらに情報を得るためアミーラを実家へ送り込むわけにはいかない――君はそう思っているんだろう?」

「その通りです」


 こちらの考えは読まれていたか。

 本音を言えばそれが一番手っ取り早い方法ではあるのだが……それによって、もしかしたらアミーラが精神的に深く傷ついてしまう危険性もあった。


 あの子はまだ若い。


 純粋無垢という言葉がピッタリ当てはまるくらいに。

 そんなアミーラの表情を曇らせるようなマネはできなかった。


 だからと言ってこのまま手をこまねいて傍観しているつもりもない。必ず何かしらの手を打って現状を打破してみせる。


 ――と、強い姿勢で臨みたいのは山々なのだが、実際問題、乗り越えなくてはならない課題が多すぎて困る。


 ただ、魔鉱山近辺に新たな町を作ろうという計画についてはカーティス村のみんながノリノリなんだよな。話ではかつて栄えていた頃に祖父母が住んでいたとか、何かしら思い入れのある人もいるみたいだし。

 

 俺としてもせっかく盛り上がっているこの空気に水を差すような真似はしたくないし、何よりこれまで苦労続きだったアボット地方の財政を立て直せる絶好の機会だ。


 グラバーソン家にどんな狙いがあるかは不明だが、それを邪魔されるわけにはいかない。


「ドイル様……今回の件ですが、私にもう少し調べさせていただけませんか?」

「構わないけど、何かあてはあるの?」

「えぇ。――古い知人を頼ろうと思います」


 正直、あいつにはあまり会いたくはないが……背に腹は代えられないか。

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