第132話 グラバーソン家の実態
「アミーラは?」
「村の子どもたちと一緒に遊んでいると思いますよ」
「そうか……」
手荷物をデスクの上に置くと、不安げにエリナが尋ねてくる。
「何か分かったんですね?」
「逆だよ。何も分からなかった。――ただ、よからぬ噂を耳にしてな」
「よからぬ噂?」
俺はエリナにグラバーソン家とマクリード家の件を話す。もちろん、あくまでも噂の範疇を出ないという注釈をつけて。それでもショッキングな内容には変わりないため、エリナの表情は徐々に引きつっていった。
「ど、どういうことですか……せっかく魔鉱石の採掘がうまくいきそうなのに」
「これに関してはそもそも事実かどうか、真偽不明だからな。まあ、火のないところに煙は立たないというが」
「でも……」
信じられないという気持ちはよく分かる。
現に俺もまだ受け入れられていない。
――って、自分で噂の範疇は出ないと言っておきながら、まるで事実のように扱っているじゃないか。
真偽をこの目で確認するまでは思考に偏りが出ないよう注意しないと。
そんなことを考えていたら、駐在所の入り口から元気な声が。
「ただいま戻りました――あっ! おかえりなさい、ジャスティンさん!」
アミーラが遊びから帰ってきたのだ。
「あれ? どうかしたんですか、おふたりとも」
俺とエリナの空気がいつもと違うと勘づいたアミーラはキョトンとした表情でそう聞いてくる。
……さすがに真正面から質問するとまずいか。
ちょっと遠回しになるが、それとなく実家のことについて触れていこう。
「何もないよ、アミーラ。それより今日はどんな遊びをしたんだ?」
「パーカーが森の方で珍しい昆虫を発見したらしいのでみんなを誘って見に行ったんです!」
「ほぉ、昆虫採集か。楽しかったかい?」
「とっても! お屋敷にいたままではきっと経験できなかったと思います!」
おっ?
自然な流れで実家の話が出たな。
では、慎重に話を――
「アミーラちゃん……最近、ご実家の様子はどうです?」
「エリナ!?」
ここでまさかのエリナ乱入。
おまけに俺の慎重策が台無しになってしまいそうなギリギリの質問をぶつけていた。
「実家ですか? 特に何も――あっ、そういえば、私がここへ来るちょっと前から他国の商人さんが足繁く通うようになっていましたね」
「っ! 他国の商人?」
おいおい。
なんか不穏なワードが飛びだしたぞ。
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