第130話 山積みの問題
「男女問わず、結婚前になるとナーバスになってしまうケースはあるが……どうもこれに当てはまらない気がするんだよなぁ」
「あら、ベローズ副騎士団長もご経験が?」
「からかうな、ミラッカ」
「失礼いたしました」
ベローズ副騎士団長はミラッカとの軽快なやりとりを終えた後で俺たちの方へと向き直る。
「式当日までもうあまり時間はない。この手の問題は当事者同士に委ねるべきなのだが……うーん」
歯切れの悪いベローズ副騎士団長。
悩みの種はリリアンさんが魔法使いとして名家であり、魔法兵団に対して強い発言権を持つグラバーソン家であり、その相手が騎士団期待の若手であるウェズリーであるということ。
ただ、自身が口にしていたように、外野がとやかく言ってうまくまとめられる話でもないからなぁ……お互いの立場を考慮すればどうあっても揉め事は回避したいところだが、果たしてどうなるやら。
ただ、今回の件はグラバーソン家を専属の魔法使いとして雇っているマクリード公爵家の御令嬢ことアリッサ・マクリード様も大変気にされている。
そして、そんなアリッサ様に寄り添っているドイル様もまた心配されていた。
あのふたりのためにも、ここはなんとかして円満解決を図りたいところだ。
それと、グラバーソン家がゴーテル魔鉱山の件について不満を抱いているという話も気になる。むしろ俺としてはこっちを本題として扱うべきかな。
すでにトライオン家ではマクリード家の協力をもとに新しい鉱山町を造るため着々と準備が進められている。
この話にはアリッサ様も深くかかわっており、まるで両家の未来を映し出しているように仲睦まじく手を取り合って計画を練っていた。
それがご破算になるのだけはどうしても避けたい。
さっきベローズ副騎士団長が言っていたように、これはアボット地方全体の問題だ。
「ベローズ副騎士団長……先ほどのグラバーソン家に関する噂ですが、信憑性はどれほどになりますか?」
「何とも言えんな。ただ、公爵家との間で何度も話し合いがもたれているというのは事実だ」
「なるほど……」
その話し合いの内容がゴーテル魔鉱山に関するものなのかは不透明、と。
両者の話し合いの中身が分かれば、打つ手もあるのだろうが。
せめてどちらかの家に仲の良い者でもいれば、こっそり教えてくれるかもしれないのだが。
「あっ――」
いたじゃないか。
うちの駐在所で暮らしている小さな凄腕の魔法使いが。
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