第129話 ラターシャ、再び
「向こうでは相変わらず活躍をされているようですね」
「活躍も何も、大きな事件なんて起きないし、平和なカーティス村でのんびり駐在勤務の毎日だよ」
「ご謙遜を。いろいろとお話は伺っていますよ?」
ラターシャはそう言うけど、俺としては本当にそこまで「やったやったぞ!」というような大仕事はしていないんだよなぁ。
まあ、昔の仕事内容とついつい比較してしまうからそう感じているだけで、普通の駐在勤務って視点から見ると違うのかもな。
一度他の駐在勤務の騎士と仕事の話をしてみたいものだ。
俺のことはさておき、問題はラターシャだ。
彼女とは以前、アボット地方内にあるゴーテル魔鉱山の調査に同行してもらった。
あの時の彼女は……まるで昔の自分を見ているようだったな。
出世に取りつかれ、功を焦って盛大にやらかす。
過去に経験があるから、ラターシャの気持ちはよく分かる。
同じ平民出身という立場もあって、他の人の倍は頑張らないとなかなか認めてもらえなかったからな。
ただ、ハンクの一件が騎士団内の見方を大きく変えつつあった。
やはり家柄だけでの人選には無理がある。
これからは今まで以上に実力主義を掲げるべきだ。
そんな声が増えているらしい。
もっとも、これも増えすぎると何かと問題を生みそうだが……ともあれ、意識改革をしようという試みについては大賛成だ。
もっといろんな人にチャンスが来てもらいたいからな。
――さて、騎士団の今後についてはこれくらいにして、話を戻すとしよう。
「なぜ君がここに?」
「話題にあがっていたウェズリーとは同期なんです。長らく同じ部隊にいましたし、最近の動きについてはバッチリ把握していますよ」
なるほど。
それで彼女が呼ばれたのか。
魔法兵団の重鎮でもあるグラバーソン家。
歴史ある一族の中で唯一魔法が使えないリリアンさんの結婚相手は騎士であり、そのふたりの仲が最近どうもおかしい。
……冷静に考えたら、なかなか大きな問題だよな。
変なトラブルに発展して騎士団と魔法兵団の関係がこじれたりはしないだろうか。
そんな心配もいただきつつ、ここからはそのラターシャの報告会へと変わった。
「単刀直入に申しますと――ウェズリーに怪しい動きは見られませんでした」
怪しい動き、か。
ぼかしてはあるけど、それってようは浮気ってことだよな。
これに関してはどちらもやらないと思っている。
問題はもっと根本的な何かか……或いは、逆に些細なすれ違いなのかもしれない。
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