第128話 不穏な動き

 ミラッカとともにベローズ副騎士団長のもとを訪ねると、早速リリアンさんの件を報告。

 すると、副騎士団長は一気に渋い顔となる。


「やはりか……まあ、そんなことだろうとは思ったよ」


 どうやら思い当たる節があるらしい。

 まあ、俺も事前にミラッカから婚約者であるウェズリーの様子がおかしく、現在休養中という話は聞いていたが、どうもあの様子ではそれ以外の理由らしいな。


「グラバーソン家で何かあったのですか?」

「うーん……こればっかりは確証がないため断言はできないのだがな」


 ベローズ副騎士団長にしては珍しく歯切れの悪い物言いだった。

 裏を返せば、それだけデリケートな案件というわけか。


 だが、ここで意外な言葉を耳にする。


「君にも大いに関係のある話なんだよ、ジャスティン」

「お、俺にですか?」


 なぜグラバーソン家御令嬢の婚約話に俺が出てくるんだ?

 気がつくと、ミラッカが冷たい視線をこちらへ向けていた。


「あなたまさか……リリアン・グラバーソンと親密な関係だったとか?」

「っ!? そ、そんなわけないだろ! この前初めて会ったばかりなんだから!」

「冗談よ」


 このタイミングで紛らわしい!

 ……しかしまあ、さっきの副騎士団長の言い方ではそう捉えられてしまってもおかしくはないか。


「あの、なぜ今回の話に俺がかかわっているのか、皆目見当がつかないのですが」

「言い方が悪かったな。君というより君の職場――つまりアボット地方が関与している可能性があるという話だ」

「……急に規模が広がりましたね」


 俺とアボット地方全体ならだいぶ話が違ってくるぞ。

 ――いや、だとしても、なんでアボット地方が関係あるんだ?


「トライオン家が進めている新しい魔鉱石の採掘現場にかかわる件に、グラバーソン家が難色を示しているという話が持ち上がっているんだ」

「えぇっ!?」


 あそこはつい先日みんなで調査した、紛れもなくアボット地方にある鉱山だ。

 だというのに、グラバーソン家がケチをつけるってどういうことだ?


 さらに詳しい話を聞き出そうとした時、執務室のドアをノックする音が。


「おっ、来たか。ちょうどここからの話には彼女にも参加してもらおうと思っていたところだから呼び出す手間が省ける。――入りたまえ」

「彼女?」


 この話へ新たに参加する人物がいるということだったが……一体誰だ?

 ドアを開けて入ってきたのは、以前知り合った女性騎士だった。


「ラ、ラターシャ!?」

「お久しぶりです、ジャスティン先輩」


 ともに魔鉱山を調査したラターシャだった。

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