第127話 ミラッカ、合流
ミラッカからウェズリーの名前が出たのは意外だった。
何せ、彼の婚約者であるリリアンさんがカーティス村を訪れ、様子がおかしいと感じたのは昨日のこと。エリナや村の人たちを除けば、それを知る者はいないはず。
そんな状況でありながらも、彼女は真っ先にウェズリーの名を口にした。
ということは、騎士団内でも彼の言動に対して少しおかしいと感じる部分があったというわけか。
とりあえず、ベローズ副騎士団長と話す前にもう少し詳しく聞き出してみるか。
「ウェズリーに何かあったのか?」
「……最近の彼は何をやるにしてもどこか上の空というか、身が入っていないみたいで、この前もとある山村近くに出現した巨大イノシシ型のモンスター討伐任務中にボーッとしていて大怪我を負ったって話よ」
「えっ!? あのウェズリーが!?」
彼の実力からすれば、イノシシ型モンスターなど軽く倒せるはずだが……よほど精神を乱されるような事態が起きたってことか。
「彼は今も診療所に?」
「えぇ。ここ最近の状態も考慮して、しばらくお休みするそうよ」
「そんな事態になっていたとは……」
可能であれば直接本人からいろいろと聞きたかったところではあるが、これだと面会できない可能性もあるな。
「そのウェズリーがどうかしたの?」
「いや……彼の婚約者であるリリアンさんがカーティス村を訪れてな」
「カーティス村を? ――ああ、そういえば彼女はグラバーソン家の出身で、アミーラとは姉妹の間柄だったわね」
「そうなんだ。ただ、そこでの彼女の様子がどうにもおかしくてな。ドイル様や偶然居合わせた公爵家のアリッサ様も心配しておられる」
「様子のおかしい原因が婚約者にあるんじゃないかもと思って、わざわざ王都まで来たというわけね」
「ちょっと早いが、定期報告も兼ねてな」
「……ねぇ、その場に私も同行していいかしら」
「えっ?」
思わぬ提案だったが、俺としてはありがたい。
ずっと地方勤務が続いているので、最近の騎士団内の動きについてはほとんど情報を持っていない状況だからな。さっきのウェズリーの件だって知らなかったし。
「ミラッカが来てくれるなら頼もしいよ」
「ご期待に副えるような情報を提供できる自信はないけれどね」
謙遜するミラッカ。
そういえば、彼女は噂話とか好きで内部事情にも精通していたな。
もしかすると思わぬ情報がゲットできるかもしれない。
頼れる仲間を引き連れて、いよいよ副騎士団長の待つ執務室へと移動を始めた。
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