第126話 久しぶりの王都
翌日。
俺は駐在所の仕事をエリナに任せ、久しぶりにランドバル王都を訪れた。
「相変わらず賑やかだな」
カーティス村の駐在所勤務になってからまだ一年も経っていないが、なんだか数十年ぶりに戻ってきたみたいな懐かしさがある。かつては当たり前で気にも留めなかった喧騒だが、今ではとても耳障りに感じてしまうな。
それだけ、俺の体は田舎暮らしに適応したってことだろう。
……思えば、アボット地方へ着いた当初は必ずここへ戻ってくると息巻いていたな。
エリート志向で出世街道をひた走るあの頃の俺は、今思うと恥ずかしいくらいの世間知らずだった。
そう思うと、カーティス村は本当にいろんなことを教えてくれた。その点だけは俺に濡れ衣を着せたハンクに感謝しなくちゃいけないのかもな。
「村のみんなに何かお土産を買っていくか」
昔の俺なら、きっとこんな発想を抱いたりしないだろう。
これもまた大きな変化のひとつだな。
王都の中央通りを抜けると、運河にかかる橋が見えてきた。
そこは数人の兵士たちによって厳重な警備体制が敷かれている。
この先に王の居城があり、すぐ近くにかつて俺が勤めていた騎士団の詰所があるのだ。
身分証明を行い、俺が騎士団に所属する正規の騎士であると分かってからようやく通行の許可が下りる。
アミーラが使い魔を飛ばしてベローズ副騎士団長に王都を訪れる件は伝えてある――が、返事を待たずに来たからほとんどアポなしみたいなものだ。
待ち時間は相当長くなるだろうし、なんだったら日を跨ぐ可能性もあるので、それまでは自主鍛錬をしたりするつもりだ。宿は詰所の仮眠室を借りればいいので無料だし。
――などと考えていたが、思ったよりも早く声がかかった。
どうやら、同期の友人が手を回してくれたらしい。
「あなたがこちらへやってくるなんて珍しいわね。何かあったの?」
その同期とはミラッカだった。
「少し気になる事態になったんでね。ある騎士の情報を集めている」
「もしかして……ウェズリーのこと?」
「っ! どうして分かったんだ?」
ミラッカはリリアンさんの件を知っているのか?
それともまた別の理由でウェズリーが話題となっているのか。
何か知っているというなら、ベローズ副騎士団長との話し合いに彼女も参加してもらわなくてはな。
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