第124話 行動開始

 翌朝。

 リリアンさんは久しぶりに妹のアミーラと楽しい時を過ごして気持ちが晴れたのか、昨日よりも顔つきは明るかった。


「ジャスティンさん、エリナさん、お騒がせして申し訳ありませんでした」

「いえいえ。また何かあったら来てください」

「豪華絢爛なおもてなしはできませんが、話はいくらでも聞きますから!」

「ありがとうございます」


 最後にお礼を口にし、ニッコリと微笑むリリアンさん。

 彼女はこれから王都へと戻り、職務へ復帰するそうだ。


「もう少しゆっくりしていけばいいのに……」

「ごめんなさいね、アミーラ。また今度ね」

「はい……」


 アミーラは寂しそうに俯く 

 あの子の年齢なら、まだまだ家族が恋しいはず。名のある魔法使いの家系で、その中でも屈指の実力者となったら、若いうちにいろいろと経験させようとする気持ちも分からなくはないのだが……それにしたってもうちょっと成長してからでもいい気はするのだが。


 まあ、その辺は名家の方針ってヤツもあるだろうし、部外者の俺が口を挟める問題じゃないからなぁ。


 ――ただ、この話はドイル様の耳にも入れておくべきだろう。

 グラバーソン家はアボット地方に新しくできる炭鉱の町に関してもかかわりを持っている。

 ならば、領主であるトライオン家当主のドイル様も無関係とは言えない。


 ……それに、ドイル様は公爵家のアリッサ様と大変親密な関係を築かれている。

 長らくグラバーソン家とは家族ぐるみの付き合いがある公爵家ならば、リリアンさんの結婚について何か情報を持っているかもしれない。

 それを教えてくれるかどうかは別問題だが……試してみる価値はある。


 というわけで、アミーラの使い魔を護衛につけたリリアンさんを見送った後、駐在所をエリナに任せて俺はトライオン家の屋敷へと向かった。



 到着すると、タイミングの良いことにアリッサ様が遊びに来ていると発覚。

 何か話が聞けるかもしれないと、早速ブラーフさんにかけ合ったのだが、どうにも渋い表情をしている。


 その理由については――中庭を見たら一目瞭然だった。


 メイド長のマリエッタさんが淹れた紅茶を楽しんでいるドイル様とアリッサ様。

 美少年と美少女による優雅なティータイム……ここへ声をかけに行くのはなかなか勇気がいるな。


 とはいえ、だからといってこのまま帰るわけにもいかないのでブラーフさんとともにふたりのもとへ移動。


「やあ、ジャスティン。今日はどうしたの? 定期報告にはまだ早いよね?」

「えぇ……今日はちょっと、おふたりのお耳に入れておきたい情報がありまして」

「あら、わたくしにもですか?」


 キョトンとした表情でカップをテーブルに置くアリッサ様。

 さて、どんな話が飛び出すかな。

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