第121話 姉妹
「お姉さまとこうしてお話しできるのは久しぶりなのでとても楽しいです!」
「私もよ、アミーラ」
とりあえず駐在所の中へと案内して詳細な話を聞くことになったのだが……途中から話は脱線しまくって姉妹の近況報告会となってしまった。
なんとか軌道修正を試みたのだが、お互い久しぶりの再会とあってか話が弾んでしまい、とても中断できる空気じゃない。とても仲の良い姉妹のようなのでずっと会えなくて寂しかったようだ。
一方、姉妹のほっこりとしたやりとりを目の当たりにして微妙な心境となっているのがエリナであった。
アミーラがこの駐在所で暮らすようになってから、エリナはあの子を本当の妹のように可愛がっていたからなぁ。自身がひとりっ子だから姉や妹がいる生活に憧れているとも言っていたし、本物の姉登場で複雑なのだろう。
フォローを入れてやらなければと声をかけようとしたその時、彼女の口がわずかに動いた。
「アミーラちゃんが楽しそうでよかったです」
それは嘘偽りのない本心だろう。
普段のエリナを見ていれば、それくらい簡単に分かる。
というわけで、気の済むまで姉妹水入らずの時間を過ごしてもらった。
――約一時間後。
「っ! ご、ごめんなさい! アミーラとの話にすっかり夢中になっちゃって!」
ようやく我に返ったリリアンさんが慌てた様子でそう告げる。
「構いませんよ。久しぶりの再会でお互い積もる話もあったでしょうから」
「あ、ありがとうございます」
「さすがはジャスティンさん! 懐が深いです!」
「ははは。難しい言葉を知っているなぁ、アミーラは」
すっかり空気が和やかになった――と、思いきや、本題へ入ろうとした途端にリリアンさんの表情が曇りだした。
そういえば、ここへ来た理由は一切話さなかったからな。
よほどの事情があるに違いない。
「リリアンさん、我々でよければ相談に乗ります。なんでも話してください」
「そうですよ! こう見えて私の父は騎士団の副騎士団長ですから、多少強引な手だっていけますよ!」
「のっけから権力をふりかざすんじゃない」
あと、そういう手に打って出るなら、公爵家専属魔法使いという立場であるグラバーソン家の方が立ち回りやすそうではある。
――って、また話が脱線しそうになったな。
今回はすぐに戻そう。
「こちらへ来た理由については……」
改めて核心に迫る質問を送る。
これに対し、
「私は……結婚に迷いがあるんです」
自らの胸の内を吐露するのだった。
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