第120話 アミーラの姉

 湖の近くで保護した若い女性。

 その容姿はアミーラをそのまま大人にしたような感じで間違いなく関係者だと思われた。


 恐らく、前に話していた彼女の姉ではないかと思う。


「しっかりするんだ。どこか痛いところはあるか?」

「い、いえ……」


 彼女は疲弊しているものの、怪我などはしていないようだ。

 とりあえず、確認だけはしておくか。


「あの、もしかして……あなたはアミーラのお姉さんですか?」

「えっ? ど、どうして分かったんですか?」


 驚いて尋ね返す女性。

 だが、ここまで顔がそっくりなら疑わない方がどうかしているってもんだ。


「俺はこの近くにあるカーティス駐在所に勤務するジャスティン・フォイルという者です。妹さんは現在訳あって俺たちと一緒に村の駐在所で暮らしているので顔をよく知っているんですよ。それで、もしかしたらと」

「そうだったんですね……あっ、申し遅れました。私はリリアン・グラバーソン。先ほどあなたが言った通り、アミーラ・グラバーソンの姉です」


 消え入りそうなか細い声でそう告げた後、彼女は気力を振り絞るようにして笑った。

 それはきっと安堵から来る笑みだろう。


「とりあえず、駐在所へ移動しましょう。アミーラもいます」

「は、はい」


 彼女に肩を貸し、さらにはリンデルも寄り添う形で駐在所へと歩きだす。

 

「どうしてここへ?」


 道中、俺はもっとも気がかりだった質問を投げかけてみた。

 アミーラの話によると彼女は大臣秘書としての仕事をしているらしいが、どう考えてもそれを放棄してここへ来ているよな。


「…………」


 俺の質問に対し、リリアンさんは沈黙を貫く。

 だが、その表情は何か申し訳なさというか、語らなくちゃいけないんだけどあまり口外はできないというような葛藤をうかがわせるものだった。

 それですべてを察してしまったな。


 正しいかどうかはさておき、ともかく何も言えない――そんな空気感は伝わってきた。

 しかし、このまま何も分からず身柄を預かるわけにもいかないだろう。


 駐在所へ戻ったらこっそりアミーラへ相談してグラバーソン家とコンタクトをとってもらおう。


 そうこうしているうちに駐在所へと到着。


「リリアンさん、とりあえず中でお話をうかがいますよ」

「あ、ありがとうございます」


 まずは落ち着かせて、それから話を聞こう。

 俺はリリアンさんを駐在所の中へ案内しようとした――その時、


「リ、リリアンお姉さま!?」


 パーカーたちと一緒に遊んでいたアミーラとバッタリ出くわす。


「ど、どうしてこちらに!?」

「い、いえ、それはその……」


 めちゃくちゃ慌てて目が泳ぎまくっているリリアンさん。

 うーん……これ、実は想定以上に厄介な案件になるんじゃないか?

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