第117話 叶わぬ恋路?

 パーカーが抱くアミーラへの想い。

 まさか恋心だったとは……いや、なんとなくそれっぽい感じはしていたけど、まさかそれを俺たちに打ち明けるとは。


 ……さて、どうしたものかな。

 こういうのは女性の扱いがうまいゲイリーとかの方が向いているのだろうけど、わざわざそのために呼び出すのもなぁ。

 悩む俺を尻目に、エリナはなぜかヤル気満々。

 胸を叩いてパーカーへ力強く言い放つ。


「任せなさい! この私エリナ・ベローズが相談に乗りますよ!」

「おぉ! エリナさんは経験豊富なんですね!」

「…………」

「エリナさん?」


 突然黙ってしまったエリナを心配するパーカー少年だが……さすがは子ども。ナチュラルに大人の痛いところを突いてくる。


 今は俺と同じ地方勤務とはいえ、もともとは副騎士団長の娘として将来を有望視される猛者だ。ハンクみたいに相応の家柄がなければ馴れ馴れしく話しかけられないまさに高嶺の花。あの若さで経験豊富なわけがない。


 それどころか、もしかしたらこれまでに異性と深い仲へ発展したこと自体がないのかもしれない。

 エリナにはこの手の話題を振れないからなぁ。

 どうしても彼女の背後にベローズ副騎士団長の鬼の形相が浮かんでしまう。

 そういう意味では命知らずなパーカーの発言だ。


 とはいえ、さすがにこのままというわけにもいかないのでそろそろ助け船を出してやろうかな。


「パーカー、アミーラがこの村に滞在するのはほんの少しの間だけだ。あの子は将来的に王立学園へと入学し、魔法兵団に入る。遠い存在となってしまうんだよ」

「なら俺も王立学園に入ります!」

「へっ?」

 

 まさかそう返してくるとは。

 どうやら、彼のアミーラに対する気持ちは本気のようだ。


 ただ、この村から王立学園に通う者が出るというのは他の子やこれから生まれてくる子たちにとっても大きな励みになるだろう。


 それに……彼の実力なら夢ではないと俺は本気で思っている。稽古をつけてからの成長速度には目を見張るものがあったし、何より本人が非常に真面目で熱心に取り組んでいた。この姿勢も非常に大切だ。


 道のりは険しいが、決して叶えられない夢じゃない。

 俺はそうパーカーへと告げた。


「俺……頑張ります!」

「いい目標ができたじゃないか、パーカー」

「はい!」


 若者に活気が出れば、村はさらに盛り上がる。

 パーカーの笑顔はそれを予感させてくれた。

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