　結果的に、俺の予想はまさかの大的中となった。

　連中は事前にグラッセラで騒動が起き、騎士団の警備状況からロード先輩たちのいる駐在所を襲撃しようと目論んでいた。

　ただ、襲ってきたヤツらは雇い主の真の狙いについては聞かされていなかったという。

　嘘を看破する魔法を使っての尋問だけに、騎士団は落胆していた。

　しかし、まったく手がかりがなかったわけじゃない。

　まず、グラッセラで行方不明となった騎士たちだが……どうやら黒幕によって連れ去れたらしい。

　これについては襲撃犯たちが自分たちに指示を出してきた使いの男から聞いたという、いわば又聞きの状態だったため、信憑性については疑わしいと判断されたようだが、俺はどうも報告書に残された、その使いの男の口ぶりが気になった。

　まるで自分もその誘拐に関与しているかのような……生々しい表現が多用されている。

この使いの男とやらの正体がつかめれば、黒幕にもグッと近づくだろう。

あと気になったのは――情報だ。

　黒幕は王国騎士団の戦力を的確に見抜き、防衛力の薄いところを突いてきた。

　向こうの誤算としては、特に勲章をもらうくらいのド派手な活躍こそないが、確かな実力を秘めているロード先輩がいたこと。

　素人に毛の生えた程度の連中が数人集まった程度ではどうしようもない戦力差があった。

　つまり、編制や位置情報については長けているものの、騎士ひとりひとりの実力までは把握していないことになる。

「やはり内部からの情報漏洩か……」

　いつもの駐在所で報告書の写しに目を通していた俺はそう呟く。

　すると、近くで話を聞いていたエリナも参戦。

　ちなみにアミーラは村の子どもたちと川遊びの真っ最中だ。

「やはり騎士団内に不穏な空気が流れているみたいですね……お父様も嘆いていました」

「副騎士団長という立場としてはそうだろうなぁ」

　エリナの父であるベローズ副騎士団長がどれほど頑張ってきたか、俺はよく知っている。

　入団時のベローズ家は今ほど力があったわけじゃない。

　あの人は現場からの叩きあげで今の地位まで上り詰めたんだ。

　そんな努力家である副騎士団長を俺は心から尊敬している。

　だからこそ、彼の理念に反するような行動を取る騎士が許せなかった。

　というか、グラッセラに住む一般の人たちを危険にさらしたわけだし、もしかしたら国際問題にまで発展していたかもしれない。

　――いや、もしかしたら敵の狙いはそれなのかもな。

　いずれにせよ、一日でも早く黒幕が捕まるよう、俺たちの方でも可能な限り情報を集めておくとするか。

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