第114話 華麗なる剣技

 国境近くにあるとはいえ、役目としては騎士団内でもかなり低い位置にあるこの駐在所に、どう見ても道を尋ねに来たとは思えない武装集団が接近していた。


 数は十人。


 どいつもこいつも悪党って言葉がよく似合う面構えをしているな。

 きっと悪事を重ねてきたから、そういう行いが顔に出るのだろう。


 その男たちだが、馬を止める気は一切ないらしく、このまま俺たちに襲いかかってくるつもりらしい。


「問答無用というわけか」

「分かりやすくていいじゃないですか」

「確かに」

 

 向こうが殺意山盛りで挑んでくるというなら、こちらは正面からそれを受け止めるまで。


 馬の上から斬りかかれば優位と踏んだらしいが――浅はかだな。


「ここは俺に任せてください」


 ロード先輩にそう告げると、俺は剣を抜きつつ男たちへと駆けだす。


「くらえっ!」

「おらぁ!」


 先制攻撃とばかりに先頭を行くふたりの男の剣が頭上から降り注ぐ。

 だが、あまりにも読みやすいお粗末な軌道であったため、回避するのに苦労することはなかった。


 むしろ馬上という状況では剣を扱う側の動きも制限されるため、一概に圧倒的有利であるとは言い切れない。


 実際、俺は男たちの攻撃をかわし、カウンターで斬撃を叩き込んだ。

 

「がはっ!?」

「ごふっ!?」


 馬から転げ落ち、そのまま気を失ったのか動かなくなるふたり。

 これで残るは八人か。


「こ、こいつ!?」

「どういうことだ!? こんな強い騎士がいるなんて情報になかったぞ!?」

「その情報を寄越したのがどんなヤツか教えてもらおうか」


 動揺し、隙だらけとなった男たちを立て続けに五人撃破。

 これで残りは三人だ。


「ダ、ダメだ! 撤退するぞ!」

「そうはさせないよ」


 逃げだそうとした残り三人の前にロード先輩が立ちはだかる。


「くそっ! どけっ!」


 男たちはお構いなしに馬を走らせるが……それでは先輩を止めることはできないな。


「おっかない――ねっ!」


 口ではそんなことを言いつつも、しっかりカウンターをキメて三人を馬から引きずり下ろすロード先輩。


 相変わらず淀みのない剣技だ。

 俺も見習わないと。


「は、話が違う……ここにいる騎士は左遷されてきた能無しって話じゃなかったのか!?」

「ひどいねぇ。とはいえ、全面的に否定できないけれど」


 苦笑いを浮かべつつ、ロープ型の魔道具で男たちの身柄を拘束していくロード先輩。

 あとは応援を呼んで身柄を引き渡せば、とりあえず脅威はなくなるな。

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