第111話 消えない疑惑
カーティス村に戻ってきた俺たちは変わらぬ日常を過ごしていた。
グラッセラでの調査が終了後にすぐミラッカが結果を報告に来てくれたが……結論として自警団の面々がどこへ消えたのかは分からずじまいとなった。
しかし、事態を重く見た騎士団はすぐに応援部隊を派遣すると決定したらしい。
あそこが機能しなくなっては、経済的な損失は計り知れないからな。
多少よそが穴になってでも戦力を投入しておく必要があったのだろう。
「よそが穴になってでも……か」
ふとそこが気になった。
騎士団の立場で考えたのなら、正直言ってどこからも戦力を割きたくはない。いつどこから敵が襲ってくるかまったく読めないからだ。
だが、グラッセラを放置しておくのだけは避けたい。
そうなれば、ある程度の戦力を割いても問題ない場所から騎士を送り込んでくるはず。
「となると……」
俺は駐在所の壁に貼られた地図へと目をやる。
「王都や国境付近の警備からは絶対に割けない。非常事態が発生しても体制を整える時間を稼げ、尚且つ騎士団側が地の利を得られる場所――ここか」
俺が目をつけたのはヤルド渓谷であった。
ここは国境から王都へ続く一本道であり、ここで手荷物などの検査を受けることになっている。
ただ、トップクラスに厳重な国境のチェックをパスしているので、人数自体はそれほど多くはないと聞いている。
過去の報告から戦闘に発展したというケースは確認できない。
しかし、だからといって今回も何も起きないって断定するのは少し怖いな。
「確証があるわけじゃないから騎士団に話を持っていけないし……どうしたものかな」
「でしたら、先輩が直接様子を見に行かれては?」
「俺が?」
いつの間にか見回りから駐在所に帰ってきたエリナがそう告げる。
ちなみにアミーラは村の子どもたちと川で元気にお遊び中だ。
「私もずっと気にはなっていたんです……あれだけの都市で大規模な騒ぎを起こしておきながら、結果として残ったのは自警団のメンバーが消えただけ。まあ、それ自体も結構な事件ではありますが、規模に対して見合っていないように思うんです」
「君もそう思っていたか」
どうやら、エリナと俺の疑問は同じのようだ。
……念のため、カーティス村はエリナとアミーラに任せてヤルド渓谷に行ってみるか。
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