第109話 制圧完了

 たとえ聖騎士が相手でも、これだけの数を相手に戦うのは無理だろう。

 ヤツらの薄っぺらい思考でたどり着ける解決策といえば、これくらいか。


 あながち間違いではない。

 時にはゴリ押しして強引に成功を掴み取ることも必要だ――が、相手が悪かったな。

 連中の中にひとりでも実際に聖騎士と剣を交えたって経験者がいたら、すぐに逃げだしていたかもしれない。


「「「「「うおおおおおおおっ!」」」」」


 それぞれ自慢の得物を手に、俺へと襲いかかる。


 ――だが、お粗末だな。

 

 視界を埋め尽くすほどの数が迫り、逃げ道を塞ぐ。

 勝ちを確信しているあいつらの表情は緩み切っているが……俺からすればまだまだ隙だらけなんだよ。


「はあっ!」


 遊んでいる場合でもないので、とりあえず目についたヤツから仕留めていく。群れることで自分の力を過信している連中には俺のスピードを目で追うことはできない。ただただやられていくのを待つだけだ。


「ぐげっ!?」

「ごはっ!?」

「どぼっ!?」


 低いうめき声をあげながら倒れていく男たち。

 結局、十分もしないうちにギルド内にいたチンピラたちは制圧。

 

「こんなもんかな」


 ここに来るまでいろいろとトラブルがあって体が温まっていたというのも大きかったな。

 とはいえ、ちょっと失敗だったのは――全員が気絶してしまった点。

 俺としたことが……これじゃあ証言を聞き出せないな。


 さて、これからどうするか。

 少し悩んでいると、


「うわっ!? また派手にやりましたねぇ」

「す、凄い……」


 エリナとアミーラが到着。


「おぉ、来たか。騎士団に連絡は?」

「取れました。まずは近場にいる遠征部隊が合流するそうですが……ひとりくらい生かしておいてもよかったのでは?」

「俺も今それを後悔しているところだ――って、誰も死んでないぞ」


 こいつらは直接の黒幕ってわけじゃないからな。

 厄介であることには違いないが、そこまでやる必要もない。

 まあ、今後の罪状次第ではより過酷な道を歩むことになるかもしれないが、それは自業自得というものだ。


「アミーラ、こいつらの動きを拘束魔法で封じておいてくれ」

「分かりました」


 こういう時、魔法使いがいてくれるとありがたいな。

 聖剣で使える魔法は攻撃魔法ばかり。

 戦闘面では大活躍するが、こういった器用さに欠けるのが難点だ。


 もともと、そういう役割は聖騎士に必要ないんだけど。


「これから治安維持に動きますか?」

「そうだな。援軍が到着するまではまだまだ荒れ模様が続くだろうし。ついでに自警団の行方について知っている者がいないか、聞き込みもやっていこう」

「「はい!」」


 エリナもアミーラもいい返事だ。

 というか、アミーラの方はすっかりこちらへ馴染んでしまったな。


 もしかしたら、彼女をここへ派遣したマクリード家当主の狙いはそっちになるのかもしれない。

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