第105話 治安悪化
グラッセラの自警団が突如姿を消したという謎の事件。
ただの職場放棄って感じじゃないし、詳しく調べてみる必要がありそうだ。それに自警団がいなくなったと知れ渡ったら治安はあっという間に悪くなる。
大急ぎでグラッセラへと駆けつけると、町の様子にそれほどの変化は見られなかった。
ホッとしたのも束の間、すぐ近くからガラスの割れる音と悲鳴が。
駆けつけると、そこでは数人の武装した男たちが魔道具の店を襲っていた。
魔道具ってのは高値がつく物も多いからな。
狙われるならやはりここか。
「おらおらぁ! 金目の物はすべて奪え!」
「どうせ自警団はいねぇんだ!」
「盗んだ物は別の町で売りさばけば足もつかねぇしな!」
「こんなラッキーな日に巡り合えるとは俺たちもツイてるぜ!」
どうやら、ヤツらは自警団がいなくなっていることを知っているらしい。
ただ――運はなかったな。
現行犯だ。
「おい」
「あぁん? ――ぶほっ!?」
「なんだ? ――べうっ!?」
「どうした? ――はごっ!?」
「騎士団か? ――ごどっ!?」
盗みを働いていた四人は問答無用で成敗。
店主と奥さんからは泣いて感謝をされたが、すぐに別の場所から悲鳴が聞こえてくる。
……どうものんびりしている暇はなさそうだ。
「一体どうなっているんだ……?」
町のあちこちで起きる暴力絡みの事件。
エイゲンバーグ商会の一件以降、自警団が強化されて誰も悪事を働けなくなっていたはずなのに、ここへきてなぜ急に?
自警団がいなくなった理由も不透明だが、まるでその事態を見透かしていたかのように集まってきた悪党どもの嗅覚の良さにも疑問が残る。
その謎を解くヒントは――本日五件目のトラブルを解消した際、女性を馬車に連れ込もうとしていた男が叫んだこの言葉であった。
「なんだよ! 自警団はいなくなったんじゃなかったのかよ! こんな強ぇ騎士がいるなんて聞いてないぞ!」
護衛として連れてきた仲間十人を倒し、黒幕と思われる御者の男をボコボコにしていたら急にそんなことを言いだす。
やはり、情報源がいるらしい。
「その話は非常に興味深いな。あんたにここの情報を与えたのはどんなヤツだ?」
「えっ!? い、いや、それは――」
「吐いてもらおうか?」
「ひいっ!?」
元々戦闘要員ではなかったらしく、少し凄んだだけでペラペラと情報を語ってくれた。
それによると……諸悪の根源は予想外の場所にいると発覚する。
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