第96話 鉱山デート?
厳戒態勢を敷きながら、ドイル様とアリッサ様を魔鉱石が発見された場所まで案内する。
「足元に気をつけてね、アリッサ」
「ありがとう、ドイル」
もうすでにふたりだけの世界に入り込んじゃっているな……というか、いつからお互い呼び捨てとタメ口で話す仲に?
「おふたりは舞踏会から本当に仲良くなりましたよねぇ」
「まったくだ。アリッサ様は気難しい方という噂だったが、今はまるで別人みたいに明るくなって、よく喋るようにもなった」
エリナとゲイリーは護衛をしつつ、仲睦まじいドイル様とアリッサ様を見てそう話す。ここまで親密になると、いよいよ縁談なんて話も現実味を帯びてきたな。マクリード家の当主であり、アリッサ様の父上でもあるドノルド様も満更ではない様子だったし。
それもこれも、すべては鉱山の運用がうまくいったらって前提がつくな。
鉱脈は見つかったんだし、あとは鉱山で働く者たちのまとめ役に経験豊富で有能な人材がいれば文句はない。
とはいえ、そんな凄い人材なら引く手数多だろうし、そこら辺に落っこちているわけでもないからな。アミーラを紹介してくれたように、今回もドノルド様の力添えに期待したいところではあるな。
ただ、ドイル様の立場では頼みづらいだろうな。
なんとかいいところを見せたいって気持ちが先行しすぎて空回りをしなければいいのだけれど……いい参謀役がそばにいたらなぁ。俺やエリナはどちらかというとそういう頭脳系はてんでダメだし。
どうしたものかと考えていたら、近くにいたラターシャが感情の灯らない表情でふたりを見つめていることに気づく。
……えっ?
どういうこと?
なんでまたそんな顔つきに?
「ラターシャ? どうかしたのか?」
「あっ、いえ……アリッサ様、とても楽しそうだなぁと思いまして」
……よかった。
もしかしたら何か怒っているのかもしれないと思ったけど、俺の考えすぎみたいだな。
「俺は舞踏会以前のアリッサ様を知らないけど、やっぱり変わったのかな」
「そうですね。ドイル様と知り合ってからは本当に明るくなられました。――でも、不思議なんですよね」
「うん? 不思議?」
「……いえ、こちらの話です」
な、なんだ?
随分と含みがあるというか、裏に別の魂胆でも隠されているかのような話し方だな。
でも、護衛騎士としては喜ばしいと思うんだけどねぇ。
危うく望まぬ結婚をするところだったのが、ようやく気の合う同世代の異性と出会えたって感じだし。何より父親であるドノルド様が気に入ってくれているというのがいい。同じ貴族でも位がだいぶ下になるトライオン家が相手でも受け入れる度量のデカさはさすがと言うべきかな。
その時、急に俺の袖を誰かが引っ張る。
視線を移すと、犯人はアミーラだった。
「どうした?」
「何か……不穏なモノが近づいています」
「っ!?」
……恐れていた事態が起きてしまったか。
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