第71話 魔鉱山への道のり
舞踏会が終わってから一週間が経った。
アボット地方には舞踏会の主催者であるマクリード家の使いがやってきて、三日後に専属の魔法使いがこちらへ派遣されてくると伝えてくれた。
このマクリード家に仕える魔法使いだが、王国議会の結果を報告しに来てくれたゲイリーやミラッカからの情報によると、俺の無実を証明するために大活躍をしてくれた人物らしい。
その時はまだ舞踏会で俺の勤務地の領主であるトライオン家のドイル様とマクリード家ご令嬢のアリッサ様がいい仲になる前だったため、これも巡り合わせというものなのかってエリナとふたりで驚いた。
ちなみに、その席で俺は同期ふたりへ正式にアボット地方へ残る決断をしたと告げた。
再び王都でバリバリ働けるようにと頑張ってくれたゲイリーやミラッカにはとても申し訳ないという気持ちもあったが、どちらも「そうなるんじゃないかと思っていた」と笑い、さらにベローズ副騎士団長も、「席をひとつ空けておくから、そっちで派手に暴れてこい」とピータを介して激励してくれた。
理解ある友人と上司がいてくれて本当によかった。
胸を撫でおろしつつ、俺は応援してくれる人たちのためにも騎士として恥じない働きをしようと心に誓うのであった。
◇◇◇
翌日。
早朝の農作業を終えた俺は湖へ来ていた。
俺が畔に立つと、気配を察知したのかここに暮らすドラゴンのアスレティカが姿を見せる。
「ワシに何か用があって来たのか?」
「よく分かったな」
「伊達に長生きはしとらんよ。それで、用件は?」
俺はアスレティカに魔鉱山のことを話した。
このアボット地方の未来を大きく変える可能性のある魔鉱石――それは独特の魔力を放っており、そういったものに敏感なドラゴンならば魔鉱石の気配に気づいているのではないかと考えたからだ。
――が、
「すまぬが、その魔鉱石とやらがどういった物か知らなくてな。お主らの力にはなれそうにない」
「そうか……」
さすがにそううまくはいかないか。
アスレティカは申し訳なさそうにしていたけど、「気にしないでくれ」と声をかけておく。
ただ、ひとつ有益な情報が。
「魔鉱石かどうかは分からぬが、お主が言った魔鉱山という場所の方向から不可思議な魔力を感じるのは確かだ」
「不可思議な魔力?」
「うむ。これを魔鉱石とやらの魔力と呼んでいいのかは分からぬが……」
「いや、それだけで十分だ」
可能性はゼロってわけじゃなさそうだ。
マクリード家からの使いによれば、明日にもお抱えの魔法使いがこのアボット地方にやってくる。
果たして、何十年も前に見捨てられたあの山に魔鉱石は残っているのだろうか。
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