第30話 収穫と護衛
カーティス村では野菜の収穫が最盛期を迎えていた。
連日早朝から遅くまで作業が続き、さすがにみんな疲労困憊といった様子。俺とエリナも手伝うが、ふたり加わっただけでは劇的に作業量が減るというわけでもないのであまり変化はなかった。
それでもなんとかすべての作業を終えると、一部の野菜は各家庭に冬の間の貯蔵食糧として保管され、残りは契約している商会へ卸すという。
その商会があるのはここから馬車で数時間ほど移動した先にある商業都市グラッセラ。
道中は特に危険もなく、これまでに何度も訪れているがモンスターや盗賊のなどの襲撃にあった経験はないという。
だが、この前の魔狼の件もあるし、以前までは駐在する騎士がいなかったため村人たちだけでの移動だったが、今はふたりも騎士が常駐しているので護衛のために町へついていくとガナン村長に提案する。
「そう言ってもらえると、我々も安心できる」
こちらの提案をすんなり受け入れてもらい、とりあえず代表して俺がついていくことになった。エリナには村に残ってもらい、留守を任せたいと思う――のだが、本人的にはそれが不満なようだった。
「せっかく先輩とふたりで町へ行く口実ができたと思ったのに……」
「遊びに行くわけじゃないぞ」
「もちろんそうなんですけどぉ……」
……まあ、彼女の真面目さは同じ隊で行動をともにしていたからよく分かっている。
しかし、まさかここまで落ち込むとは思っていなかった。
このままにして行くと仕事に影響が出るかもしれないな。
「なら、今度ふたりで王都を散策しよう」
「えっ!? いいんですか!?」
「王都の詰め所に定期報告をする義務があるからな。どのみち日帰りで戻ってくることはできないだろうし、非常時にはアスレティカの力を借りようと思っている。彼がそれを了承してくれたらっていう条件はつくけど」
「はいっ!」
めちゃくちゃ元気のいい返事だった。
正直、詰め所に行くのは気が重いんだよなぁ……周りからどんな風に見られるのか、普段は気にしない方だけど事情が事情だけに少し憂鬱だ。それでも業務だからこなさないといけないし、ここで折れては今までの努力や苦労は台無しになりかねない。
エリナの元気を見習って、俺ももう少し前向きに物事を考えられるようにならないとダメだな。
「さあ、レオンにバルク! あなたたちの出番よ! あっ、リンデルは私と一緒にここでお留守番だからね!」
「わふっ!」
話し終わった途端にいそいそと準備を始めるエリナ。
田舎暮らしが長かったから、王都へ戻れると知って嬉しいんだろうな。
――って、彼女にばかり準備を任せていてはいけない。
俺も遠征に向けて用意をしなくては。
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