第17話 弟子、誕生

 何やら子どもたちに迫られて困惑している様子のエリナ。

 見回りもあるし、助け舟をだしてやろうかと近づいていく――と、ひとりの男の子が俺に気づいて駆け寄ってきた。

 何か用があるのかと尋ねようとしたら、


「俺を弟子にしてください!」


 いきなりそう叫んで頭を下げた。


「えっ? で、弟子?」

「そうなんですよぉ」


 困ったような声をあげたエリナが事情を説明してくれた。

 俺に弟子入りを申し出た少年はパーカーと言い、年齢は今年で十歳になるという。将来は村を出て王都へと移り住み、騎士団へ入りたいらしい。


「そうか……騎士団への入団希望か……」


 つまり、将来的には俺やエリナの後輩になるってわけか。

 ……とはいえ、まだ小さな子どもだからな。これからいろんな出会いや経験を重ねるだろうし、それがきっかけになって将来の夢が変化するという可能性も十分考えられる。


 ただ、今の彼は騎士団入りを夢見て意欲に溢れているようだ。

 

「お、俺、ずっと騎士団に憧れていて、ずっとジャスティンさんとお話がしたくて」


 たどたどしく話をしていくパーカーだが、緊張しているせいか言葉が上ずっている。俺はゆっくり落ち着いて、とアドバイスを送り、彼に深呼吸をさせてから改めて自分の気持ちを語らせた。


「騎士団から聖剣を送られるのは一流の騎士だって聞きました。そんな凄い騎士のジャスティンさんから剣術を教えてもらいたいです」

「剣術かぁ……」


 うーむ、正直困ったな。

 確かに俺は聖剣を授かった身ではあるが、まだまだ精進も必要だと考えている。誰かに何かを教える師匠役は務まらないんじゃないかな。

 とはいえ、断るのも悪い気がするし……そんな風に悩んでいると、エリナがこっそり耳打ちである提案を持ちかけてきた。


「彼はまだ幼いですし、本格的に剣を教えるというよりは心構えとか基礎的な鍛錬とかでいいんじゃないですか?」

「えっ?」

「先輩のことだから大真面目に考えているのかと思って」


 うっ……さすがは元部下――いや、今も部下ってことになるのか?

 ともかく付き合いが長いだけあってこちらの思考を的確に読み取ってくる。


 だが、それは紛れもなく名案だ。

 それなら俺にもできそうだし。


「よし、パーカー。君の弟子入りを認めよう」

「ほ、本当ですか!?

「ただし、俺が教えてやれることには限度がある。そこから先は君が大きくなって、王都にある剣術道場でしっかりと学ぶんだ」

「はい!」


 剣術道場へ入れるのは十二歳からなので、彼がこの村にいるのもあと二年。その間に心変わりして別の夢ができたらそれもよし。

 騎士団としても将来有望な若手が入ってくるかもしれないし、それはそれで楽しみだな。

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