隠匿のハーレム道
ムタムッタ
VS幼馴染み
「ちょっと
「えー……」
政治家の枕詞よろしく、言葉が出ない。
何が原因かって?
違う女の子と付き合っていることがバレそうなのだ。
「さっきの子は部活のマネージャーの
「それでお尻触るの?」
「たまたまだ、たまたま。当たっちゃったの」
偶然腰に手を回したらちょっと下に行ってしまっただけなのだ。決して悪意はなく、下心しかない。
「じゃあこの前
「弟扱いされてんだよ、お前も妹扱いされてるだろぉ?」
今度手料理を振舞ってもらう予定である。もちろん、南雲――愛理の家で。ちなみに咲には内緒。
「むぅ……な、なら保健室の楓ちゃんとイチャイチャしてたっていうのは⁉ 授業中に抜け出したって聞いたよ!」
「徹夜でゲームしてて気分悪くなったから保健室で寝てたの!」
楓先生は俺の隣で寝てたけどな!
ああ言えばこう言う、返す刀で幼馴染みの詰問口撃をいなしていく。俺は決して咲を大切にしていない訳じゃない。向かって来る好意を受け入れているだけなんだ。
でも咲にそれを分かってもらうのは難しいだろう……だからこうして口八丁手八丁でぼかすしかない。決してやましいとかではない。
「生徒会長の
「生徒会の奴が行けなくなったらしくてさ、俺が呼ばれたってワケ」
普段はクールなのにはしゃいでいた梓は可愛かったなぁ。
ちなみに絵のことはなにもわからなかった。
「それじゃあ……他の人とはなにもないってこと?」
「あぁ、本命はお前だけって言っただろ?」
一番の本命は。
「わかった。真人を信じる……じゃあ私用事あるから先に行くね」
「おぅ、またな!」
足早に消えていく咲。見えないように小さくガッツポーズ。
凌ぎ切った……ッ!
まさか咲があそこまでカードを持っていたとは予想外だったが事前に回答を用意しておいて良かったぜ。俺、天才かもしれない。
すまんな咲、俺には幸せにすべき人が多いんだ。
「さてと、今日は
咲の友人である。
あの子の歌、好きなんだよなぁ……今日は2人きり~。
スマホを取り出し、奏に電話を掛けるとすぐに繋がる。
「あ、奏? 連絡遅れてごめん! ちょっと野暮用でさ、今から行けるけどどこいる?」
教室の正面、夕日の差し込む窓が眩しい。思わず片腕で遮ると、聞き慣れた声が電話越しの左耳と、反対の右耳に囁く。
「奏ならまだ
ゆっくりと、ゆっくりと視線を右に移す。
先に教室をあとにしたはずの咲は、壁際に潜んでいた。
「真人ぉ~? 私に内緒で奏とどこにいくのかなぁ~?」
「え⁉ いや、あの……」
夕日に照らされる咲の顔は満面の笑み。
ちなみに咲の特技は……空手である。暮れていく太陽に、咲の右手が真っ赤に燃える。
「私が真人の動きを知らないわけないでしょ~? 幼馴染みなんだから――――!」
鉄拳制裁と共に、意識は途切れる。
その後、俺の行方を知る者は誰もいなかった…………
なんてことはなく。
誠心誠意、他の子との清算と心を込めた土下座にて週末デートを条件に俺は許された。
「今度浮気したら本気で殴るからねっ⁉」
「さすが咲様! ありがとうございますッッッ!!」
ふふふ……甘く見るなよ久留井咲。お前の知ってる相関図はほんの一部でしかない。
俺のハーレム道は、まだ終わらんのだ!
隠匿のハーレム道 ムタムッタ @mutamuttamuta
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます