十三話

「海棠が死んだ」

 夜の高速道路をドライブしながら、そんな報告を聞く。

「まぁ、だろうな。元々、自ら捨て駒を所望するような奴だったし……あいつなりの考え方があったんだろ」

 運転の片手間にコンビニで買ったカフェオレを飲む。ミルクがたくさん入ってて、甘ったるいやつだ。

「…………気にかけてたんだろ?」

「何をだよ」

「海棠のこと」

「…………」

 こんな時間にカフェオレを摂取すると、頭が変に冴えている感覚に襲われる。まぁ、そんなのが好きだから飲んでるのだが。

「さぁな」

「…………」

 別に、特別気にかけていたわけでも無い。嵐も魔法なんて実戦で使っていないだろうから、勘を取り戻させてやろうとぶつからせただけだ。理由を聞かれればそれ以外に特に思いつくことも無い。

「守るものばっか増やして、殺されるんじゃないかと思ってるよ」

 それは何と無しに口から出した言葉だった。ただ、それに対しても向こうから反応はなく、ただ静かな時間が過ぎていく。

「…………トリスタン」

「……ん?」

「前はブラックが好きじゃ無かったか?」

「ん? ああ、そうだな」

「それと同じようなもんじゃないのか」

 まぁ、確かに、そんなものなのかもしれないが、変に冴えている頭では思考が上手くまとまらないので、適当に相槌を打つ。

「まぁ、何はともあれ。

遂にこの日が来たんだ。俺は楽しみで仕方が無いよ」

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