七話

「ねぇ、大丈夫?」

 俺にとってその声は、目の前に救世主が現れたに等しかった。

「君、家族は? 一人ぼっち?」

 東京の暗い路地裏で、漁るゴミすらも無く死にかけていた俺に、彼女は声をかけてくれた。

「………………」

 もう声を出す気力もなく、微かに首を縦に振ると、急に彼女は俺を抱きかかえた。

「軽い。女の子みたい」

 その時にみた彼女の笑顔は、わずかに頬が上がったくらいのものだった。でも、その顔は何よりも暖かくて。

 俺はその時初めて、誰かの心に触れた気がした。

「私の名前はユキ。後で君の名前も教えてね」

 それから俺達――海棠アキと柳ユキの共同生活が始まった。

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