106話 スクエア突入
「マスター、レンダーシア公国の軍勢がこちらに向かっています!」
ステラの報告は、さらなる敵軍の出現だった。
「なに!? なぜレンダーシアの人間が魔導人形の味方をするんだ!」
レンダーシア公国がスクエアを守るつもりなのか。
人間が魔導人形を助けると言うことは、レンダーシア公国が魔導人形に支配されているという予想も、あながち間違っていないのかもしれない。
それにしても、なぜこのタイミングなのか。
まるでこちらが攻撃するのを分かっていたかのようなタイミングだ。
「ボッドたちの情報でも、こちらの動きを監視している敵はいなかったはずですが……」
珍しくステラが自信無さそうに答える。
だが、ステラの情報網で分からなかったのなら仕方がない。
「理由を探すのは後回しだぜ。見つかったんなら作戦を早めればいいだけだ」
強気なバルザードの言う通りだった。
「カズヤ、囚われた人間を知っているお前たちが、建物内に救出に行った方がいい。こいつは俺たちが相手をする」
そう言うと、シデンたち黒耀の翼はウィーバーから飛び降りると、金属製の魔導人形たちに向かっていった。
シデンが動いてくれて助かった。黒耀の翼が防いでくれているうちに、スクエア内に突入しなければならない。
それに、出来ればレンダーシア軍がたどり着く前に救出しておきたい。
「準備している時間は無い。作戦を前倒ししよう。ステラ、準備はできているか?」
「いつでも攻撃できます」
「よし。みんな衝撃に備えてくれよ、派手にいくぞ。ピーナもこっちに来てくれ」
「作戦ってあれのことよね」
アリシアが空を見上げる。
「そうだ、正門をぶち壊すんだ!」
「……発射します」
カズヤとステラの声が重なった。
ステラの声が聞こえるやいなや、人工衛星からの攻撃がスクエアの正門に直撃する。
スクエアの方からとてつもない衝撃と轟音が響いた。みんな耳を押さえて地面にはいつくばる。
「なんじゃ、なんじゃ、なんじゃー!! 何じゃこの攻撃は!?」
激しい振動と共に一瞬身体が宙に浮き、その後に土砂混じりの暴風が吹き付けてくる。
門を壊す程度に威力を加減してもらったはずだが、それでも凄まじい破壊力だった。
遠くでゼーベマンが騒いでいるが、相手をしている時間はない。
シデンには伝えておいたはずなのだが、ゼーベマンには教えていなかったのか。
「囚われている人を外へ逃がすんだ! ピーナは先に中に入って、俺たちが助けに来たことを皆に伝えてくれるか!?」
「分かったよ! 絶対にリナおばさんを見つけて来るからね」
「ピーちゃん、オイラに乗れよ!」
今でもピーナのことは全員覚えているはずだ。内側からも協力してもらえると助かる。
ピーナの姿が徐々に消えていく。
消える直前に雲助にまたがる姿が見えた。雲助に乗って飛んでいけば侵入は容易いはずだ。
「ムルダは脱出してきた人達を、スクエア外の安全なところに誘導してくれ」
「分かったぜ、任せておけ」
「マスター、今の攻撃で建物の魔法障壁が無くなりました。バグボットたちを中に散開させます」
「それは良かった。人間がいる場所が分かったら教えてくれ」
魔法さえなければ、ステラからの情報も期待できる。
壁を破壊されたことで混乱していた魔導人形たちだったが、門の外にいたカズヤたちを見つけると襲い掛かって来た。
これらの魔導人形は、かつてのカズヤにとっては恐怖の対象だった。
「……でも、昔の俺とは違うんだよ」
スクエアの建物の中にいるのは普通の魔導人形の兵士たちだ。
カズヤが人間だったときには手も足も出ないくらいの強さだったが、今のカズヤには問題にならない。
自我もなく、命令された通りに侵入者に攻撃をしかけてくる魔導人形は、カズヤたちの相手にはならなかった。
スクエアの造りに詳しいカズヤが、次々と魔導人形を破壊しながらスクエア内に突撃を開始する。
正門は衛星による攻撃で木っ端みじんに破壊され、まだ土埃がもうもうと舞っている。
この土埃に紛れて侵入するつもりだ。
しかし、瓦礫を乗り越えて、一番乗りで飛び込んだカズヤは目の前の光景に驚きの声をあげた。
「……な、なんだこの形は!? 俺たちがいた時とはまるで変わっているぞ!」
スクエア内の形状は、カズヤが知っていた配置とは大きく変わっていたのだ。
以前は口の字の形をした、ただの入れ物のような形だった。
しかし、今はその中に屋根と部屋の区切りができていて、見通しが悪く行動しづらくなっている。これでは、どこに仲間がいるのか分からない。
それどころか、人間たちが一か所に集められていない可能性もある。
「……とにかく、みんなを探さないと」
襲い掛かってくる魔導人形たちを排除しながら、手当たり次第の壁をぶち抜きはじめた。
そして、20体以上の魔導人形を倒して、スクエアの真ん中らへんまで差し掛かった時、カズヤは初めて囚われていた人たちを発見した。
「みんな、大丈夫か!?」
5人ほどの人間がせまい部屋に閉じ込められていたが、どの顔もカズヤは見たことがある。
「お、お前は、ひょっとしてカズヤか……!? 川に落ちて死んだと聞いていたけど、生きていたのか!?」
久しぶりにカズヤの姿を見た仲間たちは、暗く怯えていた顔に光が差したような顔を向けた。
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