101話 パーティーの名前
最後にカズヤには、どうしても力を借りたい男がいた。
「シデン、黒耀の翼としても、この事件を解決してみないか?」
「興味深い話だが、俺たち黒耀の翼がただで動く訳にはいかないな。お前らが依頼主にでもなれば話は別だが」
黒耀の翼に対して、冒険者として依頼を出せということか。
「いくら払えばいい?」
「1日500万
シデンがにやりと笑った。
こいつはこういう男なのだ。
気位が高く冷酷な雰囲気を出しながら、
1日500万という金額はとてつもなく大きいが、通貨をエルトベルクが流通させている
Sランク冒険者パーティーの黒耀の翼を、1日500万
カズヤはアリシアの方を確認する。アリシアは肯定するように深くうなずいた。
「分かった、出そう」
「出発はいつだ?」
「明後日にしよう。セドナの旧市街へ来てくれ」
「分かった、それまでに準備しておこう」
これで奴隷として囚われている仲間を助けに行く陣容は整った。
記憶が無かったとはいえ、仲間たちを何か月も放置していたことに、カズヤは申し訳なさが募った。
1日でも早く助け出したい。
カズヤたちはセドナに戻って、急いで準備を進めるのだった。
*
セドナに戻ると、アリシアから意外な提案があった。
「冒険者として出かけるなら、パーティーとして名前を付けた方がいいと思うんだけど」
確かに冒険者がグループになって行動するなら、パーティーになっていた方が違和感は無い。
メンバーになるのは、カズヤとステラ、アリシアといったところか。
バルザードは冒険者ランクを剥奪されているので入れないのだろう。
「いいね。どんな名前にしようか?」
「カズヤなら、どんな名前がいいと思う?」
質問に質問で返されてしまった。
アリシアのことだから名前を考えついていそうだが。
「うーん……、いいのが思いつかないな。ステラなら何て付ける?」
カズヤもいいのが思いつかずに、たらい回しのように質問を振っていく。
「そうですね……。"センチュリオン"なんて、どうですか?」
「かっこいいけど、この世界には少し似つかわしくない気がするなあ」
地球の戦車の名前にもセンチュリオンという名前があった。
ステラがどうやってこの名前を思いついたのかは知らないが、ここの魔法世界には少し合っていない気がする。
「実は私もいいのを思いついているの。"翡翠の幻想戦乙女団"なんてどうかしら?」
アリシアがドヤ顔でこちらを見る。
あまりのセンスの無さに、カズヤは黙り込む。カズヤがいるのに戦乙女は無いだろう。しかも長い。
みんなが黙りこくったところに、バルザードが口を開いた。
「姫さんの特徴から、"
「……お、カッコいいな!」
真紅はアリシアの髪や目の色、覇は王族、杖は魔法使いをイメージしているのだろう。
皆を見回すが、特に異論がある人はいなそうだ。
「じゃあ、
「ピーナも、"ちんくのはどう"に入りたい!」
「え、ピーナも!? 大丈夫かなあ……」
ピーナの実力はよく分かっているが、なんとなくカズヤは心配になった。
「今回はいいんじゃない。メンバーの変更はいつでも出来るし、国境を越えるときの理由にもなるし」
今回は収容所の解放が目的だからピーナにも関係がある。
戦力としてもピーナがいてくれるメリットは大きい。
「アリシアがそう言うなら、入れてもいいかな」
ステラからも反対は無かったので、ピーナを
出発前までに、バルザードが、セドナの冒険者ギルドで登録を済ませてくれるみたいだった。
「それじゃあ改めてよろしくね、ピーナちゃん。私はアリシアよ」
「アーちゃん、よろしくね!」
改めてアリシアが挨拶をしてくれる。
「知ってると思うが、彼女がステラだ」
今度はカズヤがステラを紹介する。
「よろしく、スーちゃん! それで、どっちがカズ兄のお嫁さんなの!?」
ピーナからとんでもない攻撃が飛んできた。
アリシアとステラからギラついた視線を感じる。答えを間違えると命に関わりそうだ。
「おいおい、ピーちゃん。こんな綺麗な人たちがカズヤのお嫁さんな訳ないだろう。お情けで一緒にいてくれるんだよ」
雲助も余計な推測を付け足してくる。
「……そ、そうだな。二人は大切な仲間だから、お嫁さんとかではないんだよ」
「カズ兄は、お嫁さん作らないの?」
「まあ、そんな年齢じゃないしな……」
「いつかはお嫁さん欲しいって、いつも言ってたじゃない。変なのお!」
アリシアとステラは笑っていた。
どうやら、生きて乗り越えられたようだ。出発前にカズヤの体力が全部無くなりそうだった。
いよいよ出発当日。
黒耀の翼が馬に乗ってセドナにやってきた。
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