051話 新首都セドナ建設計画
「ステラ、宇宙船のなかに建設用のロボットはどれくらいあるんだっけ?」
カズヤはステラに尋ねた。
「小型のボットが3台、中型が2台だけです。そもそも私たちの宇宙船は調査を目的としているので、大型の建設用ボットは1台も持ってきていません。調査用の研究所や拠点を作るくらいしか使うことがありませんので」
ステラの報告を聞いてカズヤは肩を落とした。
期待していたよりもかなり少ない。それだけのボットでは都市の建設は難しい。だがその代わりに、調査用の
「ちなみに、その建設用のボットというのは、どんなことができるんだ?」
「建設に関する全ての作業を、自律して昼夜休みなく行なえます。地ならしから杭打ち、壁や屋根の設置から資材作りもできます。ただ、どの程度の家や建物を作るかによりますけど」
「……どの程度とは?」
「例えば上下水道の配管や、冷暖房設備はどうするんですか?」
「ハイカン? レイダンボウセツビ……?」
アリシアが聞き慣れない言葉を呪文のように繰り返した。
「そんな未来都市を作りたい訳じゃないよ、今の街と同じような家でいい。上水道は共同の井戸で、下水は汲み取り式だろ。冷房は無さそうだけど、暖房は魔法を使ってストーブを利用しているみたいだし」
「仮にそうだとしても、ボットの建築速度には限界があります。全てをボットに任せたら何年もかかりますよ」
たった5台のロボットで、10万人都市を全部作れという方が無理だろう。
「例えば、エストラに多い二階建て一軒家を建設するのには、どのくらい時間がかかるんだ?」
「地盤が整備されていて資材が用意されている前提なら、小型ボット3台を使って30分ほどで作れます。5万世帯なら3年くらいかかる計算です」
「さすがに3年も掛けられないと思うわ」
アリシアが横から口をはさむ。たしかにアビスネビュラはそんなに長い間待ってくれないだろう。少しでも早く実現したい。
何かいい方法は無いかと、カズヤは頭を絞った。
「俺様の地元では、家なんかレンガを積んでチャッチャッと作れたんだが、そんな風に作っちまえばいいんじゃないか?」
家造りを簡単だと思っているのか、気楽な調子でバルザードが口をはさんだ。
「レンガを積むだけだと不安定な気がするけど……」
「そうか、その手があったか!」
アリシアは柔らかく否定するが、カズヤはバルザードの言葉で閃いたことがあった。
「ステラ、元の世界にもあったんだが……。ブロックを積み上げて、家を建てていくのはどうだろう
「ブロック……ですか?」
「皆に手伝ってもらって積み木遊びをしてもらうんだよ。ボットたちには地盤整備と資材づくりに専念してもらえばいい」
「なるほど、マスターは時々賢くなりますね。たしかに、それなら工事期間を大幅に短縮できます」
ステラの少々失礼な物言いも、今のカズヤには慣れっこだ。興奮するカズヤをよそに、アリシアが話を遮った。
「ちょっと、私にも分かるように説明してくれる? 何の話かまるでイメージが湧かないわ」
「ブロックづくりと基礎工事や杭打ちなどはボットにやってもらうんだ。そこにブロックを積み重ねる作業だけを人間がやるんだ。指示された場所にブロックを積み上げるだけだから誰でもできる。だから積み木遊びといったんだ」
エストラやセドナで人夫を募集して、ひたすらブロックを積み上げる作業をしてもらう。
簡単な作業だから工期や費用を大幅に削減できるはずだ。
「ブロックを積んでいくだけなら、俺様のレンガ造りと同じじゃないか。不安定とか言ってなかったか?」
「ブロックの形を工夫すれば釘や接着剤を使わなくても、しっかり固定することは可能なはずだ。ステラなら分かるだろう?」
ステラに日本古来の建築技術の話をすると、すぐに理解してくれた。星を渡る宇宙船を作る技術があるなら、城壁や建物を作るくらい問題ないだろう。
元の世界にもあったように、3Dプリンターで建物を作ることも考えてみた。
だが、建築用ボットが5台しかないので、建物全部を作るのは無理だろう。
それなら、建築用ボットには地盤やブロック作りに専念してもらって、人間の力でできるところは、人間にやってもらった方が効率がいいはずだ。
「問題は強度のあるブロックを作れるかだけど……」
「それなら大丈夫です。この世界の建築を見ると、一部を除くと高くても5階建てくらいです。何百階建てのような高層建築では無いので、その辺りの土や樹木を材料にすれば十分な強度のブロックを作れます」
たしかに元の世界でも、植物の繊維を使った強固な素材があったはずだ。
そして、家のなかの細かな造りは人間がやらないと無理なので、職人ギルドに手伝ってもらう方がいい。
これで住居建設についての目途はたちそうだった。
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