010話 オーバーテクノロジー

 

 ブラスター光線銃による攻撃で、カズヤは次々とオークを倒していく。


「こんなに便利な武器なら、俺でも使えるぞ! ……そうだ。思念を読み取るのなら、こんなこともできるのか!?」



 カズヤは、ブラスター光線銃から複数の光線が出る様子をイメージする。


 すると、予想通り3本の光線が発射された。そのうち2本の光線が魔物に直撃して、2体とも動かなくなる。



 やはりイメージ次第で、複数の光線を同時に出すことは可能なのだ!


 3本しか出なかったのは、カズヤのイメージ力の限界だったのかもしれない。



「マスター、どうやったんですか!? いきなり複数の光線を出すなんて、なかなか出来ないですよ」


 ステラが驚いた表情でカズヤを見つめた。



 ステラから褒められると悪い気はしない。


 カズヤがイメージしたのは、今まで見てきたアニメやゲームでよくある攻撃だ。映像を知っているのでイメージもしやすい。



「こんなに簡単に扱えるなら、もっと効率的に攻撃できないかな……」


 今度は、光線が魔物を追いかける映像をイメージしてみる。その映像を強く念じたままトリガーを引いてみた。



 曲がりくねった3本の光線が発射される。逃げようとするオークを追いかけながらヒットした。 


 3本の光線で3体の魔物を仕留めることができた。イメージさえできれば、追尾機能を持たせることもできる。これでブラスターの効率性が一気に増した。



「凄いです、マスター! 初めてでこんなに使いこなせるとは思いませんでした。これなら、小型の魔物はマスターに任せて大丈夫ですね」


 そう話した途端、ステラが手に持っていたブラスターが更に長い銃へと変形した。


 そして、走っているウィーバーの上に立ちあがる。



「何だ、その武器は!?」


「フォトンライフルです。私はオークを排除しつつ大型の魔物を狙います。マスターにはウィーバーの運転をお願いします」


「ちょっ、待ってくれ……。運転方法なんて聞いてないぞ!」



 カズヤは慌てて前方のハンドルを握る。


ブラスター光線銃と同じですよ。ハンドルを握った人の思念を読み取るので、行きたい方向を想像するだけです」



 ステラは、走行中のウィーバーの上からヒラリと一回転して飛び降りた。


 そして、地面に着地するかと思いきや、足が地上に接地する寸前に10cmほど浮き上がる。そのまま地面の上を、氷上スケートのように軽やかに滑っていく。



 ウィーバーにも負けないスピードで、ブラッドベアをめがけて飛んでいった。


 魔物に近付いたところで、ステラはおもむろにライフルを構える。構えた瞬間に銃が自動的に変形すると、自分の身体よりも更に長い姿へ変化した。



「……まずは、周りのオークが邪魔ですね」


 ステラは空中を右へ左へ滑るように移動しながら、スナイパーのような姿勢で魔物を狙う。しばらく体勢を維持したかと思うと、カズヤの胴体くらいはある太いレーザーが発射された。


 まっすぐに飛んでいった光の塊が魔物に命中すると、3体まとめて吹き飛ばしてしまった。



「すごい威力だ……!」


 フォトンライフルの破壊力に、カズヤも思わず攻撃の手を止めて見入ってしまう。


 ステラは残っていたオークを一掃すると、いよいよブラッドベアに照準を合わせた。



 トリガーを引いた瞬間。


 先ほどよりも大きな光線がブラッドベアに向かって飛んでいく。巨大なブラッドベアといえども、これだけの攻撃を受ければ、ただでは済まないはずだ。



 バシイイイッッ!!



 しかし、カズヤの期待とは裏腹に、光線はブラッドベアに当たる直前で雲散霧消してしまう。


 魔物の身体に触れる前に弾かれてしまったのだ。



「光線を弾いた!? 機械的な防御システムも無いのに?」


 離れていても、ステラが驚いているのが伝わってきた。ブラッドベアの見た目はただの生物なのに、光線による攻撃を弾く能力を持っているのだ。



「ブラッドベアに魔法は効かないわ、剣を使って!」


 アリシアが大声で教えてくれる。気が付けばカズヤたちの後ろに陣取っていた。



 そういえば、以前もアリシアが唱えた炎の魔法を、ブラッドベアが弾いていたことを思い出した。


 銃から出る光線は魔法ではないが、この世界では魔法の一部として認識されているようだ。魔法を弾く魔物なら、レーザー光線すら弾いてしまう。




「光線が効かないなら、彼らの武器を借りるしかないですね」


 ステラは長いフォトンライフルを背中に担ぐと、再び滑るように辺りを旋回する。そして、騎士が落としていた一本の剣を拾いあげると、両手に構えた。



 剣を手にしたステラは更に加速する。スケートのように地面を滑りながらブラッドベアの背後に回り込んだ。


 ブラッドベアは、ステラの動きを視界にとらえきれずに翻弄される。


 ステラは両手で握った剣で、ブラッドベアの背中を思い切り斬りつけた。



「グアアアアッッ!!!!」


 ブラッドベアの悲鳴が辺りにこだまする。


「いけそうです。細い剣なので折れないか心配ですが」



 ステラは再び距離をつめると、更に深く突いた。


 確実に内臓に達するような深い一撃だ。


 そして、そのまま斬り上げるように引き抜いた。絶叫をあげたブラッドベアが激しく地面に倒れこむ。


 やがてピクリとも動かなくなった。




「やはり、この程度の武器では使い捨てにしかなりませんね」


 ステラは折れ曲がった剣を無造作に地面へと投げ捨てる。たった一人で、あのAランクモンスターのブラッドベアを倒してしまったのだ!


 カズヤが一度は逃げ出したブラッドベアに、今度は圧勝することができたのだった。




 ブラッドベアが倒れると、周りのオークの動きにも影響が出てきた。自分たちが不利になったことに気が付いたのか、無理をせずに反転して逃げ始める。


 騎士たちは逃げ出した魔物に追い打ちをかける。カズヤも遠距離からの狙撃で魔物の数を減らしていった。


 完全に戦いの潮目が変わっていた。



 戦闘が落ち着いてきたのを確認すると、アリシアがカズヤの方に走り寄ってきた。

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