鑑定 ~脱・侯爵家計画~

『ワクワク!』

『ドキドキ!』


「い、いきます!」


 僕は女神様たちに見守られながら、【初回特典無料スキルガチャ】と呼ばれるものを引くことになった。

 眼前に浮かぶ半透明のスキルウィンドウの【ガチャを回す】という部分に触れる。

 虹色に光り輝く球がゆっくりと上から転がってくる。

 そのまま目の前に落ちてくる球を両手で受け取る。


『リノくん、開けてみて!』

『何が出てくるのかなあ?』


「は、はい! うーん、こう、かな?」


 やや開けるのに苦労しながら開けることができた。

 眩しい光が球から出てきて、その光が僕の身体に吸い込まれていった。


『リノくん、スキルウィンドウを見てみて!』

『なんのスキルが出たのかな?』


「これは≪鑑定≫? 僕でも読める! あ、今まで読めなかった文字も≪鑑定≫を意識すれば読めるようになった!」


『よかったね、リノくん』

『うんうん、鑑定があれば困ることはないよねー!』


「でも、僕には意味が分からないことも書かれているので、女神様たちがいなかったら【スキルガチャ】もできませんでしたよ。あと、この【受け取りボックス】のこともわかりませんでしたし」


『そうね、こちらから物品を送ることが出来ることを知れたのはでかいわね』

『私にも妹にも送る権限があるのはいいけど、まさか専用のショッピングサイトがあまり充実してないのが残念ね』


「ですけど、これもレベルが上がればいいんですよね? シチョウシャ? が増えればいいんでしたっけ?」


『うーん、どうやって増やせばいいんだろう……』

『私たちと同じように追加ディスクが手元に来た人数なのかしら?』


「まあ、そこは追い追い考えていきましょうよ、女神様。僕からしたら、服を買ってもらえただけでも嬉しいんですよ?」


『うぅ、リノくんの笑顔が眩しい……』

『こんな安物でここまでの笑顔が引き出せるなんて、最高に幸せだわ』


 女神様は安物って言っているけど、この布のさらさらとした肌触りからして高級品だというのがわかる。

 紐で締め付けなくてもいい、ゴムっていう素材でずり落ちる事のない下着。


 それに【スキルガチャ】という存在。

 これは先ほどのシチョウシャからお金をもらうことで使用可能になるらしい。

 金額が高いとミルティ様が呟いていたから、これは女神様でも滅多に使えないみたいだ。


 今はシチョウシャを得るためにスキルレベルを上げたいのだが、そのレベルの上げ方がわからない。

 それにレベルが上がれば、話しかけてくることができる神様が増えるみたいだけど、一度にたくさんの神様に話しかけられても困る。


『これでリノくんの脱侯爵家計画も進むわね!』

『でも、今日はもう眠いわ。今日明日は休みだからいいけど、そのあとは妹のゆかり、じゃなかったメルティに昼間は任せるわ』


「女神ミルティ様、お疲れ様です。おやすみなさい」

『ああ、幸せな夢が見れそう。おやすみ、リノくん』


『というわけで、ここからは私ひとりになるわ。リノくん』

「はい、メルティ様」


 てぃろん♪ と軽い音と共に【ミルティ様が退室されました】というメッセージが目の前に表示された。

 この文字が読めるのも≪鑑定≫スキルのおかげなんだろうな。

 ≪鑑定≫を意識しないと読めないのが不便だ。


『リノくんは今後どうしたいとかある?』


 メルティ様に話しかけられて、僕はどうしたいかを考える。

 両親から離れることは絶対だ。できることなら妹も連れ出したい。

 そのあとは二人で生活していきたい。それと生活するための後ろ盾が欲しい。

 せめて、妹を養えるように働きたいとメルティ様に伝えた。


『ふむふむ。じゃあ、商会に入るといいかもね。読み書き計算はできるんだよね?』


「はい、簡単なものですができます」

『うん、なら商人見習いとして働くのはいいかも。たしかアルドーレ商会があるはずだけど、今どこで活動してるんだろう? いずれ王都一の商会になるんだけど……』


「アルドーレ商会、ですか?」

『うん。その商会が一番いいと思う。たぶんリノくんの力になってくれるはずだよ』


「でも、ソフィアをどうするか迷います。僕と違って期待されていますから……」

『そのソフィアちゃんもこのまま家に置いておくと、望まない婚約を結ばれるわよ』


「そんな……」

『だから、二人同時にじゃなきゃダメ。これは絶対よ』


「わかりました」


 力強いメルティ様の言葉に僕は頷く。

 そして、僕はメルティ様から礼儀作法や言葉遣いを学んだ。

 女神様たちのことはまだ妹のソフィアには内緒にしている。

 僕のスキルが使えることが両親に伝われば悪用される可能性があるため、知る人物は少ない方がいいとメルティ様に忠告されたのだ。


 そして、二日後の夜。運命の日がやってきた。

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