【中編】神仏のミスで地獄に落ちた社畜。モンスターが跋扈する異世界に転生する~地獄の王の神通力を貰ったのでSS級攻魔師として、可愛くて名家の許嫁ハーレムと子孫繁栄に勤しみたい~
🔥SOU🔥9月01日より新作投稿開始
第一章 セットアップ
第1話
俺は何者かになりたかった。
小さな頃から漠然と、周囲から肯定される人間になりたいと思っていた。
幼少期であればその対象はアニメのヒーロー、それが成長と共に芸能人、スポーツ選手などの著名人になり、容姿や才能で劣ると自覚するに至り、その熱は徐々に冷めていった。
それでも消えぬ憧れの炎は燻り続けるも、壁にぶつかるたびに楽な方へと逃げてしまった。
それならそれでやりようはあったはずだった。
今にして思えば、もっといろいろなジャンルに挑戦すべきだったのだろう。
自分が興味を持てる道を見つけられるように……。
人生を捧げたいと思えるような、何かを見つけたかった。
残念ながら現実は、そんな夢物語のようには出来てはいない。
学校を卒業する頃には、俺の人生は社会の歯車になっていた。
出会いも無ければ変化もない、代わり映えのしない人生。
生きていくのに精いっぱいで、金を稼ぐため寿命をすり減らす日々に、気が付いたらたくさんの可能性が潰えていた。
今日も仕事が終わって半額シールが張られた弁当を買うために、少し離れたスーパーマーケットに足を延ばす。
それが間違いだった。
「助けて下さい!」
暗闇の中から半裸の女性が飛び出してきた。
「何があったんですか?」
「兎に角、助けて下さい!」
女性はパニックを起こしているようで話にならない。
「女ァ……」
刃物を持った男が物陰から飛び出してくる。
「何、なんだよお前!」
「邪魔をするなぁぁあああああ!!」
男の気迫に気圧され、逃げ遅れてしまう。
学生時代武道を齧っていたため、一瞬動きが遅れたもの犯人の手を摑む事に成功し揉み合いになる。
「放せコラァ!」
「大人しくしろ!」
「どけコラ! やめろお前ら! ――っ! あ゛もう痛い痛い」
そう言いながらもナイフを手放す事もなければ抵抗を止めることもない。
「ぐっ……」
「何なんだよお前……俺が何したって言うんだ放せコラ!
辞めろ! 何をする! 俺は知ってるぞ、お、お前だろ! ずっと俺を監視しやがって! こんなの認められるか! お前ら訴えてやる ゴホッ!」
強姦魔が何か言っているが、彼の言葉は耳に入ってこなかった。
揉み合いは縺れガードレールに迫っていた。
高低差のあるここの道路から落ちればタダでは済まないだろう。
でも憧れたヒーローなら怯んだり、諦めたりしないはず!。
今こそ、俺は何者かになるんだ!
「うぉおおおおおおおおお」
全力で押し返すも小石に躓いて強姦魔諸共、ガードレールから落ちてしまう。
「がはぁぁ」
落下した衝撃で肺の中の空気が一瞬で吐き出される。
折れているのか打撲なのか、打ち付けた身体が熱い。
全身で感じる熱が痛みだと理解した瞬間、呼吸が辛くなる。
だが幸いなことに、まだ死んではいないようだ。
「し、ぬのが……」
代り映えのしない人生だが、やりたいことはあった。
例えば恋愛がしたかった。
友達と馬鹿がやりたかった。
神様、もし次があるのだとしたら……やり直させてください。
走馬灯のように思い出す人生の中で漫画の広告を思い出した。
『異世界転生。転生したから本気出す』
そんなことがあるのなら、次はもっと積極的に行動しよう。
失敗を恐れず新しいことにも挑戦しよう。
失敗したっていいじゃないか。
やらないで後悔するよりやって後悔しよう。
でも、死ぬのは怖いな……
こうして俺の意識は途絶えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『お前は極卒のミスで地獄に墜ちた』
誰の声だろう? 頭に声が響く。
ここ地獄では時間の感覚が曖昧になるほど長い年月責め苦を受けている。
そのため考えることが難しいほどに思考力が低下していた。
『お前はスーパーに行く途中で、強姦魔から逃げていた女を助け、犯人と揉み合いになり、共に転落し車に轢かれ死亡した。
そして不運なことに、強姦魔の肉体と魂がが混ざり、罪の取り違えがなされた』
地獄の鬼をも従えるその超越者は、淡々と事実を読み上げるかのように話を進める。
『強姦魔は婦女暴行、拉致監禁、強姦、殺人、堕胎などという悪行を重ね仏法に背いた。本来はその者が地獄に墜ちるはずだったのだ。そしてお前自身は善行や人助けを加味すれば、例え地獄に落ちよう共ここまで深い地獄に落ちることはなかった』
「なら、俺は天国へいけるのか?」
『否だ、お前では徳が足らぬ。第一本来御仏の教えには天国はない。あるのは御仏に至れぬ神々の国……ただ人のお前には関係のない場所だ』
超越者は仏像のような顔を横に振って否定する。
『それにお前の魂は穢れ過ぎた。
穢れと言うモノはシミのように落ちずらい。
故にお前に捌きを降した王と、その同格である十三王より神気を分け与え、記憶を残した上で転生させてやる』
その声は どうだ? 嬉しいだろう? とでも言いたげだ。
『彼の三千大千世界を担当する仏曰く、妖怪変化溢れる世界だと言う。我らの分け与えた神気を用い、妖怪変化を調伏し、御仏の威光を示せば魂の浄化も早まる』
「そっちのミスで俺は何年も地獄の責め苦を背負ったんだ!
保障をしてくれよ」
全ては地獄の鬼とその上司であるコイツらが悪い。
本来は浄土かもっと軽い地獄だった言うのに……理不尽だ。
『よかろう。人の子よ喜べ王の加護をやろう』
「本当か?」
『――である我は嘘は付かぬ』
聞き取れない。
魂の格のようなものが違いすぎるせいだろうか?
口調こそ優し気でではあるものの、超越者の態度は言葉を交わせる獣……人間が犬猫を扱うようなものに感じる。
神仏は人間への興味が薄いらしい。
超越者である地獄の王への要求が通り安堵して気が抜けた俺は、疲れからか急に眠たくなり意識を手放した。
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『あとがき』
読んでいただきありがとうございます。
本日から中編七作を連載開始しております。
その中から一番評価された作品を連載しようと思っているのでよろしくお願いします。
【中編リンク】https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/collections/16818093076070917291
【次回連載予定作品】のリンク
https://kakuyomu.jp/users/a2kimasa/news/16818093077299783210
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