第2話
全身を包み込む熱い何かは、痛みとも感じるほどに熱く絶え間なく襲ってくる。今まで幾度も感じた全身の痛み。まるで火の中にくべられたような猛烈な熱さを魂で感じる。
そして――室内にいる人々の心を震わせる声が響いた。
「う、産れました!」
聞き慣れない女性の声が聞こえる。
「あ、赤ちゃんは……?」
「どうして泣かないんだ!?」
「わ、わかりません!」
女性達の心配する声が聞こえる。
息が出来ない。
呼吸ができず苦しんでいると、お尻の辺りに衝撃が走る。
――――バシン!
するともう一度ケツが叩かれる。
――――バシン!
痛みと衝撃に耐えられなくなり口から声が漏れる。
「えっえっ……ふぎゅあ、ほぎゃぁああぁぁぁぁぁ――――!!」
「奥様もう大丈夫ですよ!」
「誰か若君様をお呼びして!」
「若奥様、お身体起こしますね」
「早くぬるま湯を……」
「生まれてきてくれてありがとう
「……若奥様、
暖かくて大きな手が頭を撫でる。
体温と愛、その二つをひしひしと感じる。
それはまるで母の温もりそのようだ。
頭を包み込む温かさは冷め、看護師か助産師と思われる女性の胸に抱かれ洗われくるまれ抱かれている。
乱暴に開けられガラガラと音を立てて誰かが入ってくる。
分娩室? でもドアの音的には病室なんだよなぁ……
「無事に産まれたそうだな。男か?」
開口一番が性別確認って、もしかして旧家とかそう言う所に転生したの!? 仕来りとかめんどくさそうだ。
妖怪変化溢れる世界って超越者にも言われたし……もしかして陰陽師とか呪術師とか悪魔祓い的な感じ?
いやぁ~個人的には和風ファンタジー結構好きなんだけど、やっぱり王道は異世界転生でしょ!? 金髪碧眼の巨乳のエルフを嫁にしたかったなぁ……
「――――ッ!! 若様この度は御子息の御誕生お慶び申し上げます。宿願のご子息です」
「うむよくやった
「はい。我々と致しましてもそのようになることを願っております」
……ん? あれ、俺の耳がおかしくなったのかもしれない。なんか聞き捨てならないことがいっぱいあったような?
俺の予想が正しいのなら最悪だけど……まさか……
「初産ながら大きな赤子をよく産んだな」
「先生は最近は小さく産むのが主流と仰っていましたけど……」
「日々命を懸けて戦う武士を小さく産でどうする? 妖魔に負けることは許されんのだぞ?」
「……それはそうですが……」
武士? 妖魔? やっぱり中世ヨーロッパじゃなくて和風ファンタジーじゃないか!
え? 刀一本で化け物狩るの?
そんなリアルモンスタ〇ハンター嫌なんだけどー
こう、魔法とか呪術で遠距離からチクチク出来ないの?
使い魔とかさ……そう言うの無いの?
こうさぁ「問おう。あなたがわたしのマスターか?」とか言ってくる騎士王顔のサーヴァント……
「神はいかなる
「判らん……だがまずは“
三年ってなに?
俺死ぬの?
折角生まれ変わったのに死ぬとか嫌なんですけど?
……って言うかあの超越者が二度目のチャンスをくれるほど、慈悲深いなんて思えないんだけど、最初で最後のチャンスぐらいのニュアンスだったよ?
俺のことを話す両親は恐らく妖魔を払う存在(多分陰陽師とか呪術師、祓魔師とかそう言うの)で古くから続く名家。
そして俺は地獄に落ちて転生した凡人。
……ん? あれ、『和風ファンタジー』で『妖怪的なモンスター』がいて『
――――ああそうだ。なんか聞き覚えがあると思ったら、ライトノベル原作の異能バトル作品にそんなのがあったなぁ……あれ? でも
スゥーー、落ち着け冷静になれ……まだリーチ。完全一致まではいってない。落ち着け冷静になるんだ。
「ここに居るのはあなたと信のおける部下だけだから言います。立派な『
コウマシ、こうまし、
――は!? 今、
俺、超嫌味な選民思想で男尊女卑のドブカス野郎じゃん。
異世界転生、チート、陰陽師って喜んでたのに……ははっ一気に罰ゲームになってる。
「
物語に登場する『悪役』それは主人公を引き立たせるための『対』となるキャラであることが多い。
しかし近年の娯楽作品では、主人公と比べられる為に現れ読者を楽しませ
時に悪態をつき、時に悪事を働き、主人公を困難に陥れるが、結果としてヒロインと主人公を引き立てる事になる。
それは俺
正史では
いやぁ俺の人生、お先真っ暗で笑えるわ。
いや、笑ってる場合じゃないんだけど……こう言う場合ってどうすりゃいいの?
クッソこうなることが判っていたら、破滅回避系の転生モノとか二次創作系の小説読んどけば良かったぁぁああああああああ!!
あれ……なんか急に眠気が……
「えっ、えっ……」
「疲れちゃったみたいね」
「体力を使ったんだ」
「
父はドアの隙間から言交わしている。
きっと色々あるのだろう。
俺はと言うと揺りかごのような場所に乗せられ瞼が重たくなっている。
普通の赤子と違って問題なく目も耳も聞こえているのは幸いだったな……
しかし、これからどーしよう……
俺は睡魔に負け眠りに着いた。
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