びぎにんぐ・ひーろー?
黒幕横丁
勇者の始まり
「勇者よ……目覚めなさい」
誰かが俺を呼ぶ声が聴こえる。
「勇者よ……目覚めるのです……」
誰だ、呼んでいるのは、少し待ってくれ……。
「スナック菓子を懇切丁寧に畳んでポイントを稼ぐ時間はありません、勇者よ」
なっ、何故、俺の唯一の楽しみを! まだ200ポイントしか貯まって無いというのに!
飛び起きたら自分の部屋だった。内職であるスナック菓子の袋を畳んでいる途中で寝てしまっていたらしい。途中にしていたから悪い夢でも見たか。
「いいえ、夢ではありません」
夢の中と同じ声がして俺は咄嗟に振り向く。そこには発光している人が立っていた。
「ふ、不法侵入者だーーーーー!!!」
ちゃんと寝る前に家の戸締りをしていたというのに人が入り込んできていた。完全に不法侵入者だ。この間12月にも赤い服と髭のおじいさんが忍び込んできたから、警察に突き出してやったけど。何?不法侵入月間か何か?
「不法侵入ではありません。正規の手続きを踏んで入らせてもらっています。私は女神、貴方を導きに来たのです。勇者よ」
「め、女神……」
正規の手続きを踏んできたなら不法侵入者ないけれど、大丈夫かこの女性自分を女神だなんて自称して。
「自称なんてしていません。事実です。勇者よ、魔王を倒しに魔王城へ行くのです。これは貴方に任じられた宿命なのです……」
「しゅく……めい……?」
「そうです。貴方が勇者なのはその証。さぁ、城へ向かい魔王を倒す準備を整えるのです」
俺に、そんな使命が……、あるわけないだろぉ!!!!!!!
「もしかして女神さんは、俺の名前が“勇者”だからってそんなこと言ってるわけじゃないですよね?」
「えっ」
女神の顔から動揺が生まれる。
「ただただ両親がカッコいいからと付けているだけのキラキラネームですが、勇者の証見えます?」
「えっと、その……」
女神が俺の押しにタジタジしている時だった。
「女神様! 大変です。この部屋じゃなかったですよ。二つとなりでした」
何か黒子のようなもの(ばっちり黒子だったが)が女神に近づいてくる。
「なんと! えっと、勇者さん大変失礼しました。わたくしどもはこれで……」
どうやら間違いに気づいたらしく、この場を立ち去ろうとする女神。
「そうは行かないんだよなぁー」
俺は手に電話を持っていた。
パトランプの海の中、女神と名乗る女性とおつきの黒子はパトカーに乗って運ばれていった。
「よしっ!」
今日、俺はこれから過酷な運命を背負わされる本物のヒーローとなったのだった。
びぎにんぐ・ひーろー? 黒幕横丁 @kuromaku125
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます