雨宿り

矢助「ねえねえ。」


矢助が三人の間に割って入ってくる。


為景「何だよ?」


為景っ!敵対心が見え見えだよ…


吉治が為景を宥める。


矢助「君たちどこに向かおうとしてるの?」

吉治「京に向かってるんだよ。」

矢助「京に?」


素直に答える吉治に為景が小声で話し掛ける。


為景「言っていいのか?」


為景は敵対心と言うより心配そうに聞いていた。


「大丈夫だよ、きっと。」

矢助「おーい。」


矢助がひょこっと俺の顔を覗き込んでくる。


矢助「もうすぐ雷が鳴りそうだな。」

「そうなの?」

矢助「うん、そんな気がする。」


外を見ると雨は相変わらずザーザーと地面を叩いている。


矢助「木の下にいたら危ないよ?」

為景「雨宿りする場所がないから、仕方がなく木の下にいるんだよ。」

矢助「おー、なるほどね。」


矢助はしばらく考えるとパッと顔を上げ、


矢助「俺の家、来る?」

「え?」


いきなりだな。


為景「は?危ないとか言っときながら外に連れ出すつもりかよ。」


為景は思わず口に出す。


まぁ、正論だな。


矢助「そうだよ?だから俺の家に来ないって」

吉治「いいの?お邪魔して。」

矢助「うん、だって俺しかいないし。」


そう言うと為景の肩をポンと叩く。


矢助「困った時はお互い様だよ!!」

「なら、お邪魔しようかな。」

矢助「お!じゃあ、行こうよ!多少濡れるけど」

為景「分かったよ、雷が鳴る前に早く行こう。」


矢助が雨の中走り出したそれを見て俺たちも続いて走る。




為景「あいつ、足速いな!」


為景は走りながら話しかけてきた。


「速すぎるって…」


あの足が速い庄次郎よりも速い!

流石忍者だな。


吉治「森?」

「ここに家があるの?」

矢助「そうだよ!家を作ったのさ!」

「つ、作った?」

矢助「うん、ほら!見えてきた。」


矢助が指差す方を見るとツリーハウスの様な家があった。


え!?ツリーハウスみたい!すげー!


吉治「これが家なの?」


吉治と為景は唖然とした顔をしていた。


矢助「ほら、早く入りなよ!濡れちゃうよ。」


矢助はツリーハウスの様な家の入り口で手をひらひらしていた。


「お邪魔しま〜す。」



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