第2話 猫との別れ
母は職場で、猫の話をしていたようである。
猫との生活は、結局数週間で終わりを迎えた。
「猫、引き取るって言う人を見つけたよ」
「え……」
私は猫をぎゅっと抱っこする。
猫は不思議そうに、真ん丸の目で私を見た。
「もう見つけてきたの……」
「そうよ。凄く猫が好きな人でね。いつでも会いに来ていい、って言っていたから。ずっとお別れするわけじゃないの。それに、別にその子がいなくなって寂しいから、って理由じゃないんだけど……。職場の人の犬が赤ちゃん生むみたいだから、もらって欲しいって言っててね」
「犬……。でも、この子も大事な家族だよ……」
「ほら、約束だっただろう?」
父は穏やかに言う。
そうだ……。
この猫を家に上げて、家族三人で約束をしたのである。
『飼い主が見つかるまでの保護』と。
結局、次の土曜日。
母と一緒に猫をその人へと譲りに行くことになった。
私は、猫を抱っこしながら大泣きした。
「本当にもらって良いの? この子、すっごく猫の事大事にしているみたいだけど」
「ほら、約束だったでしょう?」
「大事にしてください……」
泣きながらそう言うのが精一杯だった。
「もちろん、大事に可愛がるから。お母さんと同じ仕事しているし、休みで用事がないなら大抵家にいるから、この子の様子を見に来ていいからね」
何度か様子を見に行ったが、猫はその度に元気に大きく育っていた。
横にも大きくなっていた気もするが……。
しばらく、ペットは飼わない……。
私はそう思っていた。
だが、そんな決意など唐突に突き崩された。
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