第3話 こんにちは、わんちゃん!
「ねぇ、会社の人の知り合いが犬をもらって欲しいんだって。三頭も面倒見きれないから一頭もらってって……」
ちなみに、猫を譲った時に母の会社の人の犬が赤ちゃんを産むという話は結局偽妊娠だったと、後で聞いた。
「え? 犬……」
「あんたもお父さんも犬が好きだし、良かったらどうかな、って」
「……別に飼っても良い」
「犬も可愛いもんだ、あの猫も忘れられないもんだけど、幸せそうだからね。こっちも相手の家に行ってばかりというのも良くないし、いいきっかけになるんじゃないかな」
父の一声で、結局我が家は犬を迎えることになった。
その犬は、シー・ズーの母犬から生まれたと聞いたが、シー・ズーの倍はあるオス犬だった。
だが、一目見て思った。
とっても可愛い犬が家族になるんだ、と。
その犬と暮らし、私の中で一つの想いが始まった。
『犬の美容師さんになりたい』
その原点は、間違いなくこの愛犬である。
この犬を世界一可愛くしたい、という幼い思いが、動物専門学校への進路を決めてしまっていた。
結局、動物専門学校までは夢を叶えたが、不器用な自分にはトリマーは務まらず、学費の問題もあって、結局私は犬の美容師という夢はかなえられなかった。
しかし、周りから動物の相談を受けることは何度かあった。
違う方向性、とはいえ動物に携わることができるという夢をかなえてくれたのは、可愛い愛犬だろうと思う。
見上げた空に、虹がかかっていた。
きっと、今は虹の橋から応援してくれているのだろう。
先住した猫や、祖父の亡くなる直前に一時家で預かったオウム、今のペットで先に旅立ったメダカたちと一緒に。
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