第2話 イセカイノサクシャ【VS門番】②


 ティアオブザティア☆異世界の住民になろう


『イセカイノサクシャ』②

【VS門番】

 



◇【本文】




「あーあ。やっぱり持ってねェじゃん!」

 きょとんとするディース。

「ほら、南の島のチラシ……」

 少年がそういうと、ディースは思い出したように答えた。


「あ、いけない。つい、うっかり」

「おいおい、これが無きゃ、説得力ってもんが出ねェだろ」

 少年がそういって、ディースにそのチラシを何枚か手渡した。

 ディースは南の島のチラシを手に入れた。(テロリーン♪)


「あ、ありがとう。バオっ!」

「おう!」

ディースに礼をいわれた少年が照れ笑いした。

勇ましい声で「おう」と返事を返した。

少年の名は、本当はバオールというのだが町の皆んなからはバオと呼ばれているようだ。




『後ろの少年がやっぱり持ってないと踏んでいるが?』

 それがなにか?


『持っていないだろうことが、なぜ分かるの?』

 日常的な付き合いで、ディースに物忘れのクセがあると周知してる。


『周知しているならもっと早く確認できたのでは?』

 例えば、どのようにですか?


『声を掛けるまえに衣服のポケットを無断で探っても問題なさそうな仲でしょ?」

 仲が良いかは下駄をはくまでは誰にも分かりませんよ。


『きょとんとしたのはなぜですか?』

 指摘の内容にピンと来てないから。


『ディースたちは南の島に住んでいるの?』

 そんなこと書いてないでしょ。


『書いてないことは否定でいいのね?』

 いや、ここは南の島ではありません。


『ディースが思い出したように言ったのは定形文ですか?』

 物忘れの人がよくいう台詞です。


『後ろの少年がシラシなしでは説得力に欠けると言っているけど…』

 いってみたい年頃なんです。


『後ろの少年はチラシを幾つも持ってるの?』

 そのようです。


『後ろの少年は無言で背後から彼のポケットに投函できたよね?』

 ゴミも同然のものを無断でというのは気が引けたのでしょう。


『では、後ろの少年はゴミに説得力を見出しているの?』

 私はイセカイノサクシャです。説得力は保証します。



『後ろの少年は開口、肝心のアレといっているよ?』

 あなたの思い込みなのです。


『この情報源の出どころは明かされるの?』

 もうすぐです。……情報源の出どころって言った?(ようやく壊れ出したか)


『ディースは物を受け取ると音をだすの?』

 単なるイメージに過ぎません。


『少年は、照れ笑いをするほどシャイには思えないよね、だれも』

 積極性のある人が照れない定義がありますか。


『ではその後ディースはまた急いで家の中に入ろうとするんですね?』

 なぜですか?


『バオは勇ましい声でおうのでしょ?』

 おう、というのは返事です。


『バオがバオールなら、ディースのほんとは何?』

 ディースだけです。


『町の皆んなから呼ばれるまでに何かをしたのか?』

 彼らは懸命に遊びました。



『……これ…いったい…いつまで続くのだ……ぐふっ』



 はい死んだ。


 目の前の門番は悶絶しながら息絶えた。

 こんな質疑が起こらぬようにあらかじめ本文に組み込まれているのが小説。

 足りないと聞きたくなるし、聞いても分からぬとなれば混乱もする。

 理解不能さによる脳へのダメージが死因に繋がったのだ。

 

 門をくぐってこのまま入ってしまおうと思う。

 必要だった住民票は門番のものだが戦利品として貰い受ける。


 うおおおお。


 ついに異世界への切符を手に入れた!

 そして、

 そこに見えるは、もしかしてギルドカウンターではないか?



『……いらっしゃい。何にいたしますか?』

 何ができるんですか?


『……冒険者登録と、クエスト受注と報酬受け取りなどだよ』

 それじゃ、早速ですが報酬受け取りでお願いします。


『……そいじゃギルドカードの提出をしておくれ』

 これかな。ほい!


『……おお、あなたは異世界の入り口の門番様ですね』

 顔を見ても判らないのかよ。

 私はこうして異世界の門番へと転職しました。


『……あなた様の報酬は始めましての大地にてご用意した…お急ぎください』


 こ、この先へ行けば、そこに出れるの?

 なぜか急かされた。


 出口と思われる扉を開けた。

 始めましての大地に出た様だ。

 振り返ると入ってきた扉が消えていた。


 そこは後戻りが出来ない世界のようだ。

 扉を抜けると丘の上にでた。


 そこから見下ろす世界は見たこともない美しい景観が広がっていた。

 見たことはないのだけど、この景色はどこかで出会っているような。

 広大な森林や草原が遠くに広がっている。

 見惚れながらも、脇にあった細くてなでらかな坂を下っていくと、


 不意に上空から笑い声が振って来た。


『フォーふぉっふぉっふぉっふぉふぉお──い!』

 白髭のクソじじいが空から落ちて来た。

 誰だ? と聞くと。


『……ディースやおかえり。腹が減っておるのではないか?』

 え、もしかしてここはディースの家の中。

 祖父ということは、ガラフ爺さんだな。


 なぜだか私は、私の描いたディースになっているようだ。

 それは頂けない。


 ディースはまずいんだ。


 このまま私はディースの人生を歩みたくない。

 知ってるから、彼がどうなって行くのかを。


 家をでなければな。

 まだ外にいるだろうバオに話して南の島行きの件を見送るとしよう。




 【VS門番】


  終わり





最後まで目を通して頂きありがとうございました。

 これで終わりです。

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ティアオブザティア☆異世界の住民になろう ゼルダのりょーご @basuke-29

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