短編小説

@ababababababab

おわりのうた

夜ごはんを食べた

鮭おにぎり

「うまいかも」

でも

まだ

アノ味を忘れられない

いつ食べただろうか来年の夏に食べたアノ…


「あ いや去年か、」


そんなことを考えながら段ボールの小さな箱から最後の一つのおにぎりを手に取り口いっぱいに頬張る。


「やっははうはいは(やっぱうまいわ)」


口の中からおにぎりがなくなったあとペットボトルに入った

少し濁った水を飲み干す。


最近おにぎりしかたべてないなぁなんて思っていたら

ふと去年の夏のことを思い出した。

去年の夏、僕は食べるものを探しに北の方向に向かって結構な距離の場所へ出掛けに行っていた。



***



昔舗装されていたと思われる地割れやナニカが暴れたような傷跡がある道に沿って転ばないように慎重にすすんで行くと、四角くて上のほうには空色と緑色そして白色の模様がある壁があり、正面には窓と同じような素材で作られた壁がある建物を見つけた。


恐る恐る入ってみると、そこにはいくつか横に長い棚が並んでいて、そこに食べ物らしきものが一つだけポツンと残っていた。


「ラッキー!少ないけど来たかいがあったんだ!」


探索に行ったり配給された食料でも見たことがないものだった。


「これは、、?」


赤色で『辛』と書かれた筒状の男性の手首から指先までの長さのものでなんの素材でできているかはわからないが

これは絶対に辛そうなものだと直感した。


「うわぁ…辛そうだなぁでもおいしそう」


最近何も食べていなかったので無意識のうちによだれが垂れていた。

じゅるり…

中身を確認する為に蓋のようなものを半分開けてみた。

覗いてみるとお菓子のようなものだったがこれの表面には赤い液体のなかに糸のようなものが入っている。


「全然イメージと違うんだけど……」


期待通りのものが出てこなくて結構ショックだった。

だが一人知り合いに昔の食べ物について詳しい人がいた。

たしかに空腹で気を失いそうだけど(盛った)久しぶりのごはんはおいしく食べたい。


「彼女に聞いてみよっと」


そんなこともありつつ建物の中にほかに何かないか探してみたけど

結局水二本しか見つからなかった。

正直はやく食べたいので建物を出ていくことにして最後に日記だけ書いといた。

その後急いでもと来た道をたどって帰ることにした。



***


無事に帰って来られたので荷物を担いだまま彼女の拠点へ向かうことにした――

あいつの拠点(小屋)の前まで来て。コンコン。とドアをたたくと小屋の内側から声がした。


「あいつの言葉は?」


その声は彼女の声だった

いかにも平然とためらことなく僕は言った


「ナイフを突き立て恩を唱えよ」


そう言うとドアが開いた。


「久しぶりじゃん。何しに来たの?」


と、彼女が言う


「久しぶり」


彼女に会えてすこし安堵感に包まれた。

そしてさっきの食べ物についての要件を話した。


「それは ”カップラーメン” だね」


初めて聞いた言葉だったのでなんのものにも連想できなかったため

味が予想できなかった。


「それって、おいしい?」


そう聞くと彼女は答えた。


「多分これを食べたら普通の舌には戻れないね…」


彼女が冗談まじりに答えてくれたが言うなら間違いないと思い

その言葉を聞いた僕はとてつもない食欲で興奮状態だった


「早く作って!!」


僕がそうお願いすると

彼女は快く了承してくれ手際よく用意してくれた。

そこには白い煙がもわもわと立っており、あつあつならーめん(?)の姿が見えたと同時に

ほっぺが落ちるようなにおいがしてさらに食欲が増してきた。


「いただきまーす!!」


ラーメンを口にすると僕には表現できないほどのものがあった…


「辛っ!!」


おいしいけど辛いっていう予想が的中した。

いいのか悪いのかわからないけど彼女には本当に感謝だなぁ。


「私こんなの初めて食べたよ!」


興奮していて一人称を間違えてしまった。

しかし彼女は天使のような柔らかな笑みを僕に向けた。



***



そんなこともあったなぁと過去の思い出に浸っていたらもう日が上がっていた。

もうこんな時間かと思いながらお風呂に入って着替えを済ませ就寝した。



****



パチリと目が覚めた。上半身だけを起こし自然と窓の方を見る。

穴の開いたカーテンの隙間から光明な光が差し込んでいた。


「早く起きすぎた……」


まあそんなことはいいかと思いベットから降り、洗面所に行き

冷たい水と配給品の石鹸で顔をあらい歯ブラシで歯を磨いた後ボサボサの髪の毛を

オイルとくしを使って丁寧にとかした。その後着替えをする。ふとこの前探索しに行った建物にあったなんの柄もついていないミニスカートを見つけ持ち帰ってきたことを思い出した。ハンガーにつるしてあったスカートを手に取り履く。

配給品である立ち鏡の前に立ち寝ぐせがついていないか確認し服のしわを整え

朝の支度が終わった。


よいしょとギィィと音が鳴る椅子に腰を掛け

テレビのリモコンをポチッと押してテレビをつけた。


アナウンサー「続いてのニュースです、昨日未明、食料配給用運送車両が襲撃を受けました。実行犯はテロ組織の仕業だと防衛事務局は調査を進めています――」


テレビをぼーっと見ながら短くため息をつく。


「はぁ…また起きたよこういう事件、今日の食べ物どうしよう…」


面倒くささを感じながらテレビを消しギィィと音がなりながら椅子から立ち上がり 玄関の方へ向かい、汚れた茶色の靴を履き家の扉を開けた。


「行ってきます」


そう言って誰もいない家を出る。

空を見上げても窓から見えた光明な光を放つ太陽は見えず雲に包まれ曇りの天気になっていた。

最近は南の方向に行くことにハマっている。

その前に第一大天使アイシャの墓場へ行き祈りを捧げなければならない。

南の方向に位置するため探索しに行くついでに寄れるのが楽だ。

早めに帰ってきたいので早速向かうことにした。


***


――着いた。

アイシャの墓の像の前まで来てみたがまだ早いからだろうか、それともアレにやられたのだろうか…人が一人も見えない。まあでも正直そんなこと考えても仕方がないので早く祈りを捧げることにした。


「ああ…天をつかさどる大天使アイシャ・ログ・ダーナよ、

この地に降り注ぐ魔のモノの力から我らを救いたまえ」






























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