深夜。ベンチで寄り添う男と女。

「どうしよう、これから」

 女の問いに男は答えない。

「私、海がある街がいいな」

 元気な声。強張った女の顔。

「それも、いいな」

 ぎこちない男の笑顔。

「でしょ」

 誇らしげな顔。

「でも、本当はどこでもいい。二人ならどこでも」

 安堵したような女に、男は頷こうとした。

 赤い光。視線をやれば、パトカーが公園に近付いて来ている。途端に女が表情を消す。強く抱きしめつつも、男の顔も強張る。

 後ろ手で鞄の中を探る。程なくして、見つけた包丁を握り込む。

「ずっと、二人だ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る