液晶

佐藤凛

液晶

私はさっきから映像を食い入るように見ている。

映像には四角い部屋にポツンと一人の女の後ろ姿が映っている。

映像の女はお世辞にもいい状態には見えず、爪楊枝のような瘦せこけた手足、内臓も入っていないような腹、浮き出たあばら骨。

異臭がするのか女の周りには蠅が数匹飛んでいた。最初は蠅の羽音かと思ったが、よく聞くと女が何かブツブツ言っている。

私がなんでこんな映像を見ているのか分からない。だが、目が離せない。そんな感じで10分程見ていたら、女が急に叫びだした。

私の肩が一瞬緊張感に包まれるが、私は女の声に耳を傾ける。女が何を言っているのか私には分からないが、女が震えながら叫んでいるということだけは分かった。

ひとしきり叫んだかと思うと、女はまた叫びだしその場でシャドーボクシングを始めた。ひたすら空中を殴る。殴る。殴る!私の目には滑稽に見えてしまって、しばらく鼻で笑いながら見ていた。女が殴る。殴る。殴る!私はそれを見る。見る。血。血!血だ!

よく見ると女の腕の周りには微かな血しぶきが舞っていた。なんで血しぶきが出るのか気になって、映像をよく見ると、映ってる。

割れた薄型テレビのようなものが!その破片に女は自身の腕を引っ搔いたみたいだ。

それにしても似ている。今、女の映像を映している私の薄型テレビに。いや違う同じだ。まったくの同じ機種。それだけではない。部屋の色から間取りまで何から何まで私が今たっているところと同じ!

私の体に一気に悪寒が走り、私の細い腕に鳥肌が一気に立つ。緊張と困惑の汗を垂らしながら私は悲鳴を上げた。

その時、私の丁度真後ろでカメラの動く音が・・・。

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液晶 佐藤凛 @satou_rin

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