ep.2 晴れやかに、また鮮やかに
気分がとても晴れやかだ。
今までの延長線上にない人生の開花にとても感動している。
俺を不気味がるひそひそ話もされない。
在ってもそれを聞き取れない。
耳をつんざく程の大量の人の声に魘されるのはもう無い。
程よく音が聴こえ、程よく音が遮断されている。ひどく快適だ。
今日はもう家に帰ろう。
◇自宅
(ガチャ…)
なんか自分の部屋、匂うな…。
おそらく、嗅覚も変わったみたいで、以前の自分の残り香を感じる。臭くはないのだが。
なんか、元の俺の抜け毛も気になる…。
見た目だけでなく、五感や感受性まで
なんだか不潔な気がしてきて風呂に入りたくなってきたな…。シャワーを浴びてこよう。
…。
そういえば、着替えがない。服があるにはあるが、今の身体には大き過ぎる。
…服を買いに行くか。
◇服屋
ここ、安価なアパレルショップで元住んでいたとこも展開していたけど、自分に合うサイズの服が無く長らく来ていなかったな。
品揃えが凄く新鮮だ。
以前使っていたデカイ服を取り扱う服屋とは比べ物にならないほどお洒落な服で沢山である。
好きに服を選べるのは久しぶりだ。今日は沢山選んじゃおう。
あ…これ良いな…。
〜1時間後〜
『ご購入ありがとうございました〜』
ふぅ…。上下合わせて2着ずつの服と、上着一枚と下着数枚買えたかな。
下着、サイズがわからず戸惑っていたけど店員さんがなんとか採寸をしてくれて、本当に助かった…。
久々に服を選べて楽しかったな。
特に青い花柄のシャツが気に入った、今日お風呂上がったら直ぐ着てしまおう。
それにしても店で試着したとき、ビビるくらい似合っていたな…。
あまりにも似合っていて、気分が浮かれすぎて絶対要らないであろうサングラスまで買ってしまった。
どこで着けるんだ…。
着替えも揃ったし、そろそろ家に帰って風呂に入るか。
…。
そういえば、帰り道に学生服の仕立て屋があったな。
入学も近いし、今日のうちに制服を頼んでおこう。
◇仕立て屋
(ガチャ…)
あれ…。人が居ない。
代わりに紫色の光を
よくわからないので、機械を近くで見てみることにした。
『◆手を近づけて操作してください。』
と文字が浮かび上がっている。これは自分が触って良いものなのか…?
近くに人も居ないので、とりあえず手を近づけてみる。
『◆入学証、又は学生証をお持ちですか?お持ちの場合は機械にかざしてください。』
入学証は確か、合格発表の日に貰っていたな。
受験番号と入学した証明が書いてあり、学生証を交付する前限定の簡易的なもの、みたいな説明を受けた気がする。ここで使うのか。
入学証を機械にかざしてみる。
持っていた手ごと表面に紫色の光が走っている。スキャンっぽい動作だ。
『◆公立
「はい」「いいえ」と出てきたので『はい』を押す。
『◆身体をスキャンし、あなたの体型にぴったりな制服と運動着を作製します。動かず数十秒お待ち下さい。』
先程も似たようなことをしたな…。
(ビー)
開園ブザーの様な音が鳴っている。スキャンが始まったみたいだ。
さっきの入学証のスキャンみたいに、紫色の光る線が少しずつ表面を上がっている。
音が消えたので終わったようだった。
『◆スキャンが終わりました。制服と運動着を購入しますか?』
『◆再製作は1000円程で可能ですので、サイズが大きく変わってもご安心です。』
再製作安いな…。
やっと理解したが、ここは制服の無人製作・販売所みたいだ。
試着はできないが、人が作るより確実な方法かつアフターケアもしやすいので必要無いのだろう。
人件費がかからない分、安く特注ができる仕組みのようだ。しかも即日で。
流石、都会は凄いな…。
とりあえず購入する。制服と運動着で1万8千円は安いな…。
一通り服も買えたし、今日は満足した。
帰ってご飯作って食べて、風呂に入ったらもう寝ようかな…。
◇自宅
「うん、美味い」
やっぱ身体を変えてもメシは美味しい。
味覚がやはり少し違って、少々好みが変わってる気がするが、大まかな味は変わってない。
強いて言うなら細かい風味が感じにくくなったのと、濃い味付けが好きになっただろうか。
ご飯も食い終わったところだし、風呂に入って寝よう。
〜翌日〜
「ん…」
ぐっすり寝ていたはずが目が覚めてしまった。
まだ外が暗いな…。時間は…午前2時3分か…。
腹から喉がとてもムカムカする。
猛烈に吐きそうだ、トイレに入ろう…。
(ガチャ)
「うぇっ…、ォロㇿロㇿ…(嘔吐)」
確実に食中毒だ。食べる物のことを気にかけていなかった。
前の身体と食べれるものが変わると思っていなかった。
世の中そんなうまくいかないよな…。
うぅ…気分が悪い。
全く、一体何が
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