7

 陽音が水を撒いた後、私は卒倒したらしい。とはいえ気を失っていたのはものの数分だった。目が覚めてから夢の話をしたら皆が不思議がったが、老人連中は労ってきたから、なんとなく腑に落ちているようだった。

 陽音にはきつく抱きしめられた。まさか失神するとは想像だにしていなかったようで、よかったよかったと繰り返していた。こちらも心配をかけて悪かったと抱き返した。

 それはそうと、私が気絶している間に降り出した雨によって、街の水は無事に元通りとなった。後で父を問い詰めると、今回の引き潮のような現象は蛇が水を欲したからだと言った。

「池の言い伝えがあるだろ? うちの神様は下戸なんだよ。だから時々、酒が入ると酔っ払う。前回は二十数年前だったかな。まぁ今年はちょっと派手だったが」

「へぇ。でもなんで?」

「そりゃ俺にも分からん。でもまぁ、誰かが池に泡盛かウイスキーでも捨てたんじゃないか。ありゃあきついからなぁ、はっはっは」

 酒を呷った父を見て、そんな馬鹿なと辟易した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

そして私は雨になる。 示紫元陽 @Shallea

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画