第1章 第13話 魔剣の代償

  ここは夢?それとも現実?多分、どっちでもない。


 曖昧な空間に、私の精神はいる。少しずつ声が近づいてきてるから、ここにいる時間はそう長くはない。


  また、会えるよね……たとえ夢の中でも、お父さんに会えるよね……


  少しずつ近づいて来る声に引っ張られながら、意識が少しずつ浮上していく。


  眩しいほどの光に、私は飛び出していく。






 ・・・






「莉音!目を覚まして!莉音!!」




  声はその時初めて、私の耳にハッキリと届いた。生暖かい温度が私を包み込んでいる。上半身は起こされているのだろうか。背中にての温もりを感じる。




「れ…………いな?」


「起きた!やっと……よかった。生きててくれて……」




  目の前で玲奈は泣いていた。どうして、泣いているのだろう。私には全くわからない。




「制服……汚れてるよ?」


「これくらい別にいいわよ……それよりも、莉音の方が…」


「ううん。気にしないで。私はどうにでもなるから」




  そう言って体を起こそうとしたけど、起こせない。さすがに使用の間が短すぎたかな……前は連発しても大丈夫だったのに。私もだいぶなまっちゃったな。




「ねぇ、莉音」


「ん?どうしたの?」




  どこからか苺ちゃんが近くに来てしゃがみこんでいた。そして、私の顔を覗き込みながら険しい目付きで言った。




「寿命、削りすぎ」


「え……!?」




  その一言に真っ先に反応したのは玲奈だった。気づかれてないと思ってたんだけどな……




「ねぇ……いつから気づいてたの?」


「今さっき。莉音が魔剣使ったあと。莉音、胸押さえてた」




  この子は、強いな。見えてたんだ…倒れる前のこと。あまり知られてないことだから言いたくなかったけど、この2人になら大丈夫そう。


  っと……その前に。




「これの後処理……どうしよう?」


「それなら問題ないわ。白夜学園の証拠隠蔽能力は折り紙付きよ」


「玲奈…そこ、誇るとこじゃない」




  唐突に始まった和やかな雰囲気で忘れかけていたけど、苺ちゃん、どうして血の雨の中にいる私の行動が見えたのだろう?


  まぁ、今はいいや。




「ねぇ、少し場所をどこかに移してもらってもいい?」




  私もそろそろ、覚悟を決めなきゃあげないのかな。もう少しは魔剣使っても平気だと思ってたけど、2人の目の前でこうなっちゃった以上は仕方ないね。




「一つだけ話しておこうと思うの。魔剣の代償のろいについて」


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