第1章 第12話 夢
「死地など、ここには沢山ある。けど、本当の死を感じない死地は、本当に死地と呼べるものなのだろうか」
昔死体の山の上で呟いた言葉と全く同じ言葉を、倒れゆくふたつの山の中央で呟いた。どうしてそんなことをしたのか、正直よくわからない。気がついたら口から零れていたというのが正しい気がする。
「莉音……あなた…その目」
苺のその声は聞こえなかった。そしてもう、姿も見えなくなってしまった。遅れて噴水のように吹き出した血が、私にカーテンをかけている。
血の雨が、私に降りかかり続ける。私は、急に懐かしさを感じ、目を閉じて全身の力を抜いた。
そして、儚くも苦しい夢の世界へと
・・・
「お父さん!」
目の前にお父さんがいる!もう会えないと思っていたお父さんが!
「ねぇお父さん!待って!」
私の声が聞こえていないのか、お父さんは私の方に振り向くことなく燃え盛る炎に向かって歩き続ける。
「ダメ!そっちに行っちゃったら、また会えなくなっちゃう!待って!お父さん待ってよ!!」
お父さんを止めるために走り出す。でも、走っても走っても追いつけない。それどころか、だんだん離れていってしまう。
「お父さん!ダメ……お父さぁぁん!!!!」
いくら叫んでも、走っても、お父さんに届かない。
「私、成長できたと思ってた……今度こそ、お父さんに追いつけたと思った……なのに…………なのに!!」
悔しさが、愛おしさが、苦しさが、自分の無力さに対する怒りが溢れて止まらない。そして、お父さんは炎の中に身を投じた。
「待って!お願いだから!お父さん!!もう1度だけ…もう一度だけ、親子になりたいの!!」
悲痛な叫びとはこのことを言うのだろう。でも、今度は届いたのだろうか。お父さんが私氏の方を向いて、懐かしい、本当に懐かしい声で言った。
「その先に来てはならん」
え?それってどういう───
その時、私は外からの声によって目を覚ます。
懐かしいその夢は、本当に夢だったのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます